2007年2月
(ワークショップ報告書)科学技術の未来を展望する戦略ワークショップ「健康」分野 報告書/CRDS-FY2006-WR-16
エグゼクティブサマリー

ライフサイエンス分野ではゲノム情報に基づいた基礎研究が急速に進展し、疾患の予防や治療に関する多くの知識が蓄積されているにもかかわらず、これらの成果が実際に医療産業や健康増進といったかたちで社会へ還元された例が極めて少ないという現実がある。 この要因としては、種々のことが考えられるが、識者の間には基礎と応用を繋ぐ「橋渡し」に関する研究開発が絶対的に不足しているという認識があり、事実、欧米においてはトランスレーショナルリサーチに代表される「橋渡し」に関する多くの研究プロジェクトが進行中である。
本 WS では、このような状況を踏まえ、我が国における創薬や医療技術の開発に資する橋渡し研究として「治療標的分子の迅速探索」、「シード化合物の探索・設計」、「毒性・安全性評価」、「診断分析・評価」、「治療に関する知識・手法の支援・共有」などに着目し、23 名の有識者による討議形式により今後重要となる技術・ツールやそれに資する重要研究領域の探索を行った。
その結果、「重要技術・ツール」として、ゲノムコホート情報や生体イメージング技術、疾患モデル動物、化合物ライブラリーなどが見い出され、「重要研究領域」としては、システムバイオロジー、診断マーカーの探索、タンパク質立体構造解析などを抽出した。 得られた重要技術・ツールと研究領域の多くは、それぞれ1対1に対応した形で抽出されたが、これらを詳細に分析した結果、複数の技術や研究領域に強い相関が認められた。そこで、研究領域の組み合わせによっては重要技術・ツールをより合理的に開発することが可能になると考え、医薬品等の研究開発フェーズ毎に「重要技術・ツール」を整理し、これらに資する新たな研究開発領域を再設定した。設定にあたっては、これまでの創薬等の研究開発が、「疾患エンティティ(実態)」を軽視する傾向にあることから、これを常に念頭に置き作業を行った。
その結果、以下の 5 つの研究開発領域を「健康」分野における重要領域と結論づけた。
【抽出した重要研究開発領域】
I. 創薬・医療技術開発を加速するゲノムコホート研究
II. 疾患エンティティに基づくリード化合物の合理的探索システムの開発
III. 非臨床試験の大幅な短縮化を目指したヒト外挿性動物モデルの作成
IV. 臨床試験の迅速化に資する生体内微量薬物の動態解析
V. テーラーメード処方の実現に資する最適医薬品探索システムの開発
江口グループでは、これら重要研究開発領域のうち、わが国が優先的に着手すべきものについてさらなる検討を行い、それぞれについて有識者によるワークショップや海外調査などを実施することにより具体的な研究開発戦略を策定していく予定である。

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