2007年2月
(ワークショップ報告書)「エネルギー・環境用材料技術戦略」検討会報告書/CRDS-FY2006-WR-06
エグゼクティブサマリー

世界のエネルギーの需要動向を推測すると、2030年には発展途上国を中心に現在に比べ50%増加する。特に、原油の高騰等により資源確保が非常に重要である。一方、一次エネルギー供給予測では、2050年で石油がピークアウトする。これにより不足するエネルギーを、何らかの形で確保しなければならない。特に、生産がピークになる前に解決する必要がある。このため環境にも配慮した現実的方策としては、2030?2050年までにエネルギーの高度利用を果たし、CO2排出量を2分の1?3分の1に削減する。すなわち、化石エネルギーの消費量の大幅な削減、再生可能エネルギーの導入促進、二次エネルギーの電力化・水素化、エネルギー転換部門でのCO2分離・回収等が必要で、創エネ、省マテリアル、エネルギー貯蔵の効率化、コプロダクション、エクセルギー再生、物質・エネルギー再生等の技術革新が必要である。エネルギー・環境分野の進展は材料科学の進展と直結しており、その革新的な技術開発をもたらす可能性のあるナノテク・材料技術との分野融合は必須と言えるが、現状十分な融合がなされていない。数多くの異分野研究者が集まり、推進していく目的志向型基礎研究を構築するため、明確なターゲットをいかに企画していくか。「エネルギーセキュリティー」のような誰にもわかる共通認識のスローガンが必要である。以下に討議で集約された有識者の意見をまとめた。
・材料科学分野の進展は、ひらめきや偶然でもたらされる場合が多い。サイエンスよりもむしろ、漠然とした大きな目標の下で、数多くの研究者が集まる仕掛けが必要である。材料屋だけでなく分野全体を見渡せる人が仕掛けを作る。例えば、産業界の議論に大学の基礎研究者を交える機会、場所が必要である。また今、新しい材料が次々と発見されており、新しい発想で実用化していくことが必要だ。新しい発想は、例えば、異分野から取り込む。10のファンディングのうち1を、全く違う分野の人に必ず与える仕組みも必要である。
・目的志向型基礎研究で進める共通基盤的な課題を、論文がでなくても格好いいと思える周辺の環境を醸成することが大切である。人類のための国のミッションとして大変重要であることを理解してもらう環境を、給与のあり方、昇進の基準、評価のやり方を含め新しい基準をつくって醸成することが必要である。
・目的志向型基礎研究では、同分野の研究者は優秀な人が一人いれば十分であり、異分野をできるだけ取り込み、パフォーマンス追及のための研究体制が望まれる。また研究のフェーズとして、大学と産業界が同じ土俵で仕事をするのは非効率であり、例えば米国の軍事によるサポート等、基礎知見から実用化までのギャップを埋める仕組みが必要となる。材料分野の発見から実用化までに長期間かかるという特殊性をうまくフォローするような仕組みである。
エネルギー・環境用材料技術戦略では、目的志向型基礎研究がまず重要であり、「エネルギーセキュリティー」の重要性が共通認識として得られた。研究者は、この共通認識の下、個々人の立場で様々なアプローチを進めるべきで、日進月歩のナノテクノロジー・材料分野、特にナノ構造制御という新しい学問をベースに進めることが、目標達成に向けて良いツールとなることも理解された。
エネルギーセキュリティーという目的を達成するためのキーワードは、以下のものが上げられる。
・学術研究にのみ没頭してきた研究者に、エネルギーセキュリティーという大変重要な課題の解決に向けて、積極的に参加するべきというメッセージである。
・異分野の人間がこの目的に賛同して参加できるグラントシステムの構築の必要性である。
・アジアの中の日本という視点から、日本がアジアでリーダーシップをとる。
・このため文化を中心に、日本、東洋に根差した科学技術という視点もキーワードになる。
方法論としては、様々なロードマップ等を詳細に分析し、ナノ構造制御材料等のナノテクの各領域が貢献できるアプローチ、コントリビューションのあり方を考える。その上で、テーマ設定をし、重点テーマの洗い出し、チーム編成にもつなげることが重要である。

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