2006年10月
(ワークショップ報告書)「生物生産」分野に関する科学技術未来戦略ワークショップ報告書/CRDS-FY2006-WR-04
エグゼクティブサマリー

研究開発戦略センター江口グループでは、ライフサイエンス研究の俯瞰作業の結果、今後研究推進に注力すべき分野の一つとして生物生産分野を抽出した。本分野からは、これまでにいくつかの産業イノベーションが創出されている。まず、発酵技術の確立である。この技術により、それまで開放環境において経験と勘で行われてきた味噌、醤油等の伝統的醸造法から、閉鎖環境において、アミノ酸や核酸などの有用物質を大量生産する全く新しい製造法が確立された。以来、代謝産物を基盤とし発酵産業は数十年の歴史があるが、現在もなお日本の企業が世界市場を寡占している状況にある。次に、食品成分に機能性を見出し、「機能性食品」という概念に基づいて、疾病の予防に寄与する新食品を開発したこともイノベーションの一つと考えられる。現在も多くの成果が特定保健用食品などとして、新しい市場形成に寄与している。さらに、各種微生物からの抗生物質の単離、生物変換技術による医薬品原料の大量製造法の確立などは、製薬企業に多大な利益をもたらし、我が国の医薬品産業の基盤の構築に大きく貢献してきた。一方、農林水産業への直接的な効果も本研究分野の特徴である。動物生産分野については、我が国の畜産研究における牛、豚、鶏品等の改良技術により、ブランド化された多くの品種が開発された。これらの開発過程で得られた体外受精等の生殖・繁殖技術は、多様な動物育種技術に波及しつつある。また、水産物については、海産魚の人工種苗生産に関して我が国は世界的にも抜きん出た技術を有しており、種苗生産が可能な魚種の数も他国の追従を許さない状況にある。他方、植物では、良味の米生産や多品種の果樹生産など、我が国が生んだ園芸や栽培等の技術が世界の生物生産に多大な影響を及ぼした例は枚挙に暇がない。しかしながら、近年、上記の多くの分野で停滞感・閉塞感が認められる。これは、現在のハイインプット-ハイリターンの20世紀型生物生産体系が、持続的かつ環境低負荷型のローインプット-ハイリターンの21世紀型生産体系へ転換を迫られているにも拘わらず、有効な打開策を見いだせずにいることが主な要因であると考えられる。以上のような状況の下、本ワークショップでは「生物及び生物機能を活用した食料や有用物質などの効率的かつ安定的な生産」に資する研究を「生物生産研究」と定義し、当該分野での新たなイノベーションの創出が期待される研究課題・研究領域の探索を行った。

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