2019年8月
(調査報告書)研究力強化のための大学・国研における研究システムの国際ベンチマーク ~米国、英国、ドイツおよび日本の生命科学・生物医学分野を例に海外で活躍する日本人研究者に聞く~/CRDS-FY2019-RR-03
エグゼクティブサマリー

近年、日本の研究力の低下が懸念されている。
本報告書では、大きく変化しつつある生命科学関連の研究トレンドの中で、高い研究力を発揮するための研究システムのあり方を探るべく、このような潮流の変化の中で高い研究力を発揮している諸外国について、その研究システム、すなわち、研究資金、人材開発、研究インフラ・プラットフォーム、の3要素とこれらの運用方式、さらに、異分野連携、橋渡し・産学連携といった視点を加えて日本と比較調査したものである。特に、豊富な研究資金を元に全包囲網的に取組みを行える環境を有する米国と、日本より経済、人口規模ともに小さいながら、博士人材や論文の出版数においては、日本より上位に位置する英国とドイツにおける研究エコシステムについて、重点的な調査を行い、日本との比較調査を実施した。

  1. 研究資金と主要研究機関
  2. 研究人材(若手の研究ポスト、キャリアパス、国際性)
  3. 研究インフラ・プラットフォーム、研究支援人材
  4. 異分野連携、データ科学・インフォマティクス
  5. 橋渡し、技術移転、産学連携

その結果、日本と米英独の研究環境・システムの大きな違いが改めて認識されたが、それを踏まえた上で、日本が研究力を向上させるためにグローバルスタンダードにするべき項目として以下の3点を挙げる。米英独の大学、公的研究機関に籍を置く日本人研究者からのインタビューにおける主張もおよそこの3点に集約されるのではないかと思う。

  1. 若手研究人材が活躍できる研究環境・システムの構築
  2. 海外の研究者を受け入れられる研究環境・システムの構築
    • ① 海外若手人材を惹きつける研究環境の構築
    • ② 評価システムの国際化
  3. コアファシリティ(機器・技術プラットフォーム)の整備と高度支援人材の確立

これを具体的に、ヒト、モノ、カネに分類すると下記の表の通りとなる。これらはすべて研究者が研究に取り組む時間を増やす、あるいは研究者そのものを増やすという点で連関している。

表

これらの実施には適正な評価と競争原理の導入、研究人材の流動性の向上が求められる。さらには博士号取得に対する社会的・経済的ステータスや若手や海外から見て魅力的な研究環境が必要である。我々としては、これらの欠如が日本の研究力が相対的に落ちている原因であるという仮説をもっている。 従って、この報告書全体の示唆としては、日本の研究力向上のために、大学や国研の適切な評価のための、研究科あるいは研究センター単位での活動(ヒト、モノ、カネ、アウトプット)の定量的な可視化を提言したい。本来は研究機関で自主的に行われることが望ましいが、それが難しいのであれば日本版REF(Research Excellence Framework)の導入を検討することも必要ではないかということになる。中長期的には、それが日本の研究環境(土壌)を明るくすることにつながると考える。

また、調査を通じて、上記の5つ(特に3~5)の項目に共通して、「オープンサイエンス」というキーワードが浮かび上がってきた。ここでいう「オープン」は、①研究者間のコラボレーションを促すオープンな環境、②海外の研究人材をひきつけるオープンな環境、③産業界とのコラボレーションを生み出すオープンな環境、の3つの意味である。日本はグローバルに進むオープンサイエンス化にほとんど対応できていないと言える。研究マインド、文化の違いと言ってしまえばそれまでだが、劇的に変化するライフサイエンス研究のパラダイムにおいて、従来の日本の研究システム・スタイルは適していないとすら思う。ご批判もあると思うが、読んでいただいた皆様からご意見をいただけるとありがたく思う。

欧米に共通しており、日本と大きく異なる点が3つある。若手人材開発、グローバルな教育研究環境、研究インフラ・プラットフォームに対する考え方である。これらはいずれも中長期的展望と持続可能性の視点で考えなければならない施策であり、日本の研究システムではこうした視点が欠けていると言って過言でない。 大学や国研は時代の変化を見越した中長期的な持続可能性を考慮した形で自主改革を進めることが切望され、同時に国(政府)はこれを促す制度を導入すべきである。

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