2008年1月
(国際比較調査)G-TeC報告書「幹細胞ホメオスタシス」国際技術力比較調査(エピジェネティクス)/CRDS-FY2007-GR-02
エグゼクティブサマリー

 JST研究開発戦略センター(CRDS)では、ライフサイエンス分野の研究動向を俯瞰し、今後重要となる細胞レベルの研究領域として「幹細胞ホメオスタシス」を抽出した。本領域を、幹細胞を頂点とする細胞階層の恒常性の維持と破綻の機構を解明する領域と定義した上で、その具体的な研究開発戦略を策定することとなった。その一環として、幹細胞研究に関するG-TeCを実施したところ、今後の幹細胞研究においてエピジェネティクスの重要性が確認された。これを受けて、さらに、エピジェネティクスに関するG-TeCを実施し、我が国の研究水準と、幹細胞や疾患発症機構との具体的な接点について調査した。その結果を以下に記す。
・エピジェネティクスはがん研究との関連が強いが、近年、幹細胞研究に対しても影響を与えて発展している。•エピジェネティックなシステム異常あるいは部位特異的異常は、がんのみならず、先天性疾患や動脈硬化などへの広い関与が明らかになりつつある。
・論文の頻出発表者や被引用件数の解析から、我が国の研究者はエピジェネティクスの発展にこれまで少なからず寄与していた。•欧州では、2000年以来、様々な関連プログラムが推進されており、米国ではNIHが2008年から本格的にプログラムを推進する見込みである。
・EUのプログラム、ESTOOLSは医学研究、製薬、バイオ産業応用のための技術・ツールとして、ヒトES細胞のエピジェネティック情報の整備を進めていた。•欧米ではエピジェネティクスに立脚した製薬企業があり、また、メチル化酵素や脱アセチル化酵素の阻害剤を基にしたがん治療薬の上市事例もあった。
・ドイツの企業が、DNAメチル化プロファイルによる再生医療用細胞の品質管理手法の開発を進めていた。
 以上から、エピジェネティクスは、幹細胞研究に対して、ES細胞を制御する基盤情報の整備や、再生医療用細胞の品質管理法の開発などで、大きな影響を与えていた。この点と、エピジェネティックな異常による疾患発症を関連つけ、幹細胞の機能制御および幹細胞の状態評価のための研究開発課題を設定することで、戦略プロポーザル「幹細胞ホメオスタシス」に反映させることとした。また、欧米に続き、今後、日本もエピジェネティクス関連プログラムを本格的に推進すると予想される。その際は、我が国が“今、投資する”合理的根拠に基づき、個別のエピジェネティクス研究とエピゲノム解析のいずれを指向するのか、あるいは、医療技術、機能性食品、ライフスタイル提案など、どの目的を設定するのか決定を行なうべき段階に至っていると判断された。

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