2007年7月
(国際比較調査)G-TeC 報告書「幹細胞ホメオスタシス」国際技術力比較調査(幹細胞研究)/CRDS-FY2007-GR-01
エグゼクティブサマリー

 JST/CRDSでは、平成18年12月に我が国の第一級の研究者を招聘した戦略ワークショップ「生体における細胞機能の特異性決定機構」における検討から、基礎研究フェーズの推進戦略の構成要件として、1.幹細胞の自己複製、2.ゲノムの安定性と細胞周期チェックポイント、3.細胞老化、4.エピジェネティクスの重要性が確認された。
 これを踏まえて、検討した結果、今後の細胞研究の方向性として研究領域「幹細胞ホメオスタシス」を重要視すべきであるとの結論に達した。本研究領域は、幹細胞を頂点とする細胞階層の恒常性維持と破綻の機構を解明し、難治疾患を克服する再生医療の開発、疾患発症機構の解明と創薬基盤の構築、高齢期における予防医療に資することを目的としている。戦略プロポーザル策定のため、国内外の幹細胞研究を多角的な面から把握し、我が国がどのような方向性をとるべきか見出す必要が生じ、ここに国際技術力比較調査(G-TeC)を行なった。
 1981年、マウスでEmbryonic Stem Cell(ES細胞)が樹立されて以来、幹細胞研究は学術的観点のみならず、社会的、倫理的観点からも注目を集め、急速に発展してきた。特に1998年のヒトES細胞樹立は再生医療としての可能性を顕在化させ、幹細胞研究は、現在の医学では不治の病に対して根幹治療を提供すると人々から期待されている。かくして、幹細胞研究は、現在、多くの国の科学技術施策群において重要事項として位置づけられている。既に、米国を中心に再生医療、すなわち細胞移植治療の臨床試験が始まり、研究指針に関する国際協調も進み、今後、幹細胞研究は、細胞移植治療のみならず、がんや遺伝性疾患などの発症機構の解明、実験動物に代わる新規創薬試験系の提供など、目標を拡大しつつも、グローバルな連携の下、加速度的に進展するものと予想される。本報告では、本邦の幹細胞研究が国際的に置かれている状況を、諸外国と多角的に比較分析した結果を報告する。まず、幹細胞研究の将来の応用の可能性を再確認し、幹細胞研究所の分布、各国における政策動向、知的財産の形成、臨床試験の状況などに関して多角的に比較分析した。さらに幹細胞研究に対して、莫大な公的、私的資金の提供が行われ、臨床試験事例が多くみられる米国を取り上げて、学会におけるがん幹細胞研究の潮流、および産学研究者にインタビューにより、詳細な調査を実施した。あわせて、英国に新設された幹細胞研究所についても設立趣旨、大学における位置づけなどの調査を行なった。以上を総合的に勘案し、今後、我が国がとるべき幹細胞研究の方向性を考察した。

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