2019年7月
(戦略プロポーザル)進化的社会システムデザイン ~自然科学と社会科学の連携協調による持続可能な社会の実現~/CRDS-FY2019-SP-01
エグゼクティブサマリー

本プロポーザルは、法制度や倫理的課題も考慮しながら社会システムを設計・構築し継続的に進化させるフレームワークと、その確立に必要な研究開発を提案する。進化的社会システムのデザインフレームワークは、現在の社会システムを計測しデータを集め、そのデータを分析して要件を明らかにし、要件に基づき社会システムを設計・構築して社会に提供し、新しくなった社会システムをまた計測する、というスパイラル状のデザインプロセスによって社会システムを進化させるものである。本プロポーザルでは4つの研究開発課題と、社会課題を解決するための実証実験を実施する際の「コーディネータ」の役割を重要な課題として挙げている。

1. 計測に関する研究開発課題:「統合的利活用のための、社会システムデータの解釈・カタログ化」
IoTやスマートフォンなどによって集められる社会からのデータを解釈し、カタログ化するための研究開発である。データ収集のためのプラットフォームや、データを円滑に流通させ利用するための技術的開発と法制度の整備が必要である。

2. 分析に関連した研究開発課題:「社会的規範や、法律・経済・技術の制約を考慮した、目指す社会システムをデザインするための要件定義」
集めて解釈したデータの情報をもとに理解される現在の社会と、ありたい姿としての社会とのギャップを埋める方策を、社会的な規範や法律や、経済的あるいは技術的な制約の下で実現する、要件定義としてまとめる技術である。社会に関わる広範な制約や条件をもとに要件定義をまとめる必要があるため、自然科学、人文科学、社会科学の連携が必要である。

3. 設計・構築に関する研究開発課題:「人文社会科学分野と情報科学分野の融合による社会システムの設計・構築」
要件定義をもとに社会システムを構築する際に、社会をシミュレーションし、より最適な社会システムを実現するための研究開発である。社会システムのデザインに使える精度の社会システムシミュレーションが必要であり、適切な社会のモデルが必要になる。モデルの構築には社会やコミュニティにおける人間の行動や人間間の関係の理論や、社会制度に関する理論が必要である。ビッグデータを活用し、社会科学の理論が進展することで、社会システムデザインに必要な高い精度の社会モデルが構築できると期待できる。また、モデルの高度化だけでなく、データ収集で集めたデータのデータ同化や、ディープラーニングによる学習などを利用することでもシミュレーションの高精度化が可能と考えられる。

4. 社会への提供に関連した研究開発課題:「リアルタイムのデータ収集、規制適合確認を可能にする運用管理」
社会システムの運用は法令の規制の下でなされる必要がある。社会システムが法令を順守していることをリアルタイムに確認することで、安心して社会システムを利用できる。社会システムを利用することで生み出されるリアルタイムデータと機械可読化されたルールを使って自動的かつリアルタイムにチェックする技術の研究開発である。自然言語で記述された法令や制度を機械で扱えるようにする技術や、自動で判断する技術の開発が求められる。

5. 施策推進における「コーディネータ」
社会システムを社会で運用していくためには、実証実験が欠かせない。実証実験には産学官の全体に通暁して、産学官それぞれの要請に基づいて適切なチームビルディングを行い、市民とのコミュニケーションができる、コーディネータと呼ばれる人/組織が必要である。コーディネータには非常に広範な知識や技能が必要なため、組織的にコーディネータの機能を果たす必要がある。

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