2019年3月
(戦略プロポーザル)次世代育種・生物生産基盤の創成(第2部)
~育種支援技術、生産プロセス研究の推進による、高品質水畜産物の高速・持続可能な生産~/CRDS-FY2018-SP-08
エグゼクティブサマリー

 本戦略プロポーザルは、マグロやウシなどの産業動物を高品質に、持続性や経済性の向上を達成して生産可能な水畜産の実現を目指し、そのために必要な育種、生産プロセス研究を効率的に行うための体系的な方法論創出に向けて、具体的な研究テーマや研究推進体制などに関する諸方策を提案するものである。

 世界人口は当面増加を続けるとされ、2050年には90億人を超え、それに伴い水畜産物などの動物性タンパク質の需要も増加するものと予想される。水畜産は食料という面だけでなく、各国の食、伝統行事といった文化、地方における産業基盤といった側面も持ち、SDGs、バイオエコノミーなどの観点からも極めて重要である。一方、水産分野では近年の生産量増加は主に養殖によって賄われているが、養殖可能な魚種は限られており、飼料用魚粉価格の高騰や飼料の食べ残しによる水質汚染などが問題となっている。また、畜産においても飼料価格の高騰や、世界的なウシの人工授精受胎率低下などといった問題が生じている。これらの問題解決には、従来の経験ベースのノウハウに加えて、サイエンスに基づく研究開発を通じた効率化が求められる。

 品質、持続性や経済性の全てを向上させるためには、育種の観点では大型化、高成長、高飼料効率、耐病性、耐寄生虫といった有用な形質を有する品種の創出が必須である。また生産プロセスの観点からは、低環境負荷かつ飼料効率の高い飼料や、成長・飼料効率や得られる産物の品質が高く死亡率が低い飼育養殖手法の開発が求められる。この実現には産業動物自体を対象とした研究開発を行うことが不可欠であるが、産業動物は一般的に大型でライフサイクルが長く、飼育養殖に要するスペースや飼料コストが大きいことが関連する研究活動を阻害する大きな要因となっている。

 このような状況を打開するための戦略として、本戦略プロポーザルではモデル生物における生殖工学、行動メカニズム解析などの基礎研究成果の産業動物への橋渡しや、産業動物生産現場のノウハウのメカニズム解明を通じ、優良品種創出の加速、飼育養殖法開発改良の効率化を目指すことを提案する。またこれらの研究開発課題の遂行には、従来のモデル生物や産業動物自体をその候補として、適切な生物をモデルとした基礎研究、そしてその成果の実装に向けた橋渡し、実証研究を長期的な展望に基づき推進可能な研究体制が必要不可欠である。そのための産業動物の飼育養殖設備を中核として、その基礎、橋渡し研究に必要な機材を集約した橋渡し研究拠点の整備を合わせて提案する。

 本戦略プロポーザルの推進を通じた育種・生物生産基盤の整備は、産業動物の品種改良、飼育養殖手法の開発改良を単に促進するだけでなく、基礎研究から加工流通までを含めた商業生産、マーケティング、知財戦略などの多様なバックグラウンドを有する人材の交流、シーズとニーズのマッチングの場ともなりうる。そのため水畜産分野に関する広い視野を兼ね備えた人材育成、輩出の場としても重要である。

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