2019年3月
(戦略プロポーザル)データ統合・ヒト生命医科学の推進戦略(IoBMT)/CRDS-FY2018-SP-06
エグゼクティブサマリー

<まとめ>
 本戦略プロポーザルは、個別予見・予防医療の実現に向け、わが国のライフサイエンス・臨床医学分野における最大のボトルネックである、「ヒト由来サンプル或いはヒト個体・集団を対象とした研究(以降“ヒト研究”)」および「ライフサイエンス・臨床医学に関する多種多様なデータを収集・解析する研究(以降“データ研究”)」を活性化させる方策群を『IoBMT(Integration of Bio-Medical Things)』とし、その具体的な推進戦略を提言するものである。

<提言に至る背景>
 2003年のヒトゲノム計画の完了に続く次世代シークエンサーの確立・普及を皮切りに、ライフサイエンス・臨床医学分野において産出されるデータ量は劇的に増大している。その結果、研究開発の進め方が大きく変化した。従来は、生体内の分子や細胞などの挙動を1つ1つ解明しようとする分子細胞・生化学的なアプローチが主流であった。しかし近年は、膨大なデータ(ゲノムなど)を収集・解析し、新発見につなげようとするアプローチが大きく進展し、今や“データ研究”がライフサイエンス・臨床医学分野の研究開発成果のインパクトに直結する重要な研究要素となっている。また、従来はマウスなどのモデル生物を中心に研究が進められてきたが、技術革新や社会・産業ニーズなどを背景として、“ヒト研究”へのシフトが加速している。さらに、医療情報の電子化が大きく進展し、全国の日常診療で生成される大量の医療データ(レセプト、電子カルテなど)の収集・解析がようやく可能となり、医療行政の意思決定支援(医療資源配分や医療提供方法など)への活用がついに始まったところである。
 “ヒト研究”および“データ研究”は、これからのライフサイエンス・臨床医学分野の基礎~医療応用研究を大きく加速させる不可欠な研究要素であり、国民のQOL向上、産業競争力の強化、医療行政の意思決定支援など、社会・経済的なインパクトは大きい。しかし、いち早くその重要性を認識し重点的な取り組みを開始した米欧と比べ、わが国の動きは極めて遅い。わが国のライフサイエンス・臨床医学分野の存在感の低下の大きな要因が“ヒト研究”および“データ研究”の遅れにあると考えられ、戦略的な対応が喫緊の課題である。  本戦略プロポーザルは、“ヒト研究”および“データ研究”を加速させるために必要不可欠な重要研究開発/基盤整備テーマ群を提言し、これからの新しい医療の形である個別予防・予見医療の具現化を目指すものである。それら一連の方向性を『Integration of Bio-Medical Things(IoBMT)』と定義した。

<提言テーマ群>
 研究・技術潮流、わが国の強みと弱み、既存の国内の取り組み、社会ニーズなどの観点から検討した結果、わが国において今後推進すべき9つのテーマが考えられた。本戦略プロポーザルでは、これらのうち特に重要度の高い3つのテーマについて詳細を述べる。残る6つのテーマについては、別途、戦略プロポーザル或いは調査報告書などを刊行予定である(うち一部は刊行済み)。

  • ①戦略プロポーザルで具体的に提案
  •  [提言1]『ヒト疾患研究統合イノベーション拠点(仮称)』の構築 ~大学/国研/関連病院のあり方の見直し~
  •  [提言2]疾患・医学“知”の構造化/次世代電子カルテシステムの構築
  •  [提言3]ヒトにおける全細胞生命・医科学
  • ②別途、戦略プロポーザル/調査報告書を刊行予定(一部刊行済み)
  •  1)トランススケール×ネットワーク生命科学(分子~個体)
  •  2)リアル分子細胞科学(核構造、分子動態、細胞混雑環境)
  •  3)生理的相転移(代謝、リズム、臓器連関など)
  •  4)4次元生体組織リモデリング(適応・修復の科学)(2018年3月刊行済み)
  •  5)次世代医薬基盤技術/治療用デザイナー細胞(免疫細胞医薬など)(2019年3月刊行予定)
  •  6)研究機器プラットフォーム(コアファシリティ)の整備

※本文記載のURLの内、特に記載の無いものは2019年1月7日時点のものです。

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