2019年2月
(戦略プロポーザル)トランススケール力学制御による材料イノベーション ~マクロな力学現象へのナノスケールからのアプローチ~/CRDS-FY2018-SP-05
エグゼクティブサマリー

本提言では、材料の力学特性に立脚することでこれまでの構造材料や機能性材料、有機材料や無機材料、金属材料、半導体材料といった既存の枠組を超えた材料全般に共通するコンセプトを提示し、ナノスケールにおける諸現象の理解を通じたマクロな力学特性発現メカニズム解明を目指す。これを基に新しい材料設計指針の構築、および材料イノベーションを指向した研究開発戦略を提案する。

近年、CO2排出量削減や低消費電力化など、持続可能社会実現に向けた要求がますます高まる中、素材や部品、デバイスレベルからそれらの要求に応えることが求められている。特に電子デバイスにおいては、ムーアの法則の限界が見え始めている一方で、IoTの進展や人工知能(AI)、自動運転の開発加速など、世界的に半導体需要が拡大し、半導体チップのさらなる高集積化・高性能化・高機能化が強く望まれている。自動車や航空機などの輸送機器においても、軽量・高強度・低摩擦材料の採用による低燃費化、すなわちCO2排出量削減へのニーズが高い。また、高度経済成長期に集中的に建設された橋梁や高速道路などの社会インフラの多くが既に建設後50年を経過し、その安全性が社会的な課題になっている。このような社会的な要求を満たすためには様々なマクロな材料特性に関して、ナノスケールにまで立ち戻り、これまで取り扱いが困難であった非平衡・散逸・非定常状態も含めた現象メカニズムの解明、さらに、そこを起点としてメソスケール、マクロスケールへと繋げる、トランススケールなアプローチによる総合的な解析手法の確立が必要になっている。これを通じて新たな材料設計指針を構築し、既存材料では実現不可能な高機能・新機能をもつ革新材料やマクロな材料特性の制御技術および寿命や信頼性、耐久性に関わる評価技術を開発することが可能になると考えられる。

本提言においては、マクロな力学特性に関する広範な応用技術領域の中から社会的要請の強い代表例として、「接着・接合・剥離」「摩擦・摩耗」「自己修復」の3つを取り上げ、それぞれに特化した課題を克服しつつ、非平衡・散逸・非定常状態までを含めたナノスケールにおける現象理解を可能とする新しい理論的枠組みやシミュレーション技術を確立し、そこを起点として如何にマクロスケールにおける力学特性の理解に繋げていくかが重要な課題になっている。その解決には、共通基盤技術である「トランススケール力学の学理構築」「トランススケール力学シミュレーション技術の構築」「ナノ構造およびマクロ構造のオペランド計測評価技術の開発」を軸として様々な研究開発課題を捉え直し、ナノスケールで何が起こっているのか、それがメソスケール、マクロスケールにどのように繋がっているのかをスケール間の壁を越えて、一気通貫に解析するトランススケールなアプローチを確立する必要がある。

本提言の研究開発を進めるにあたっては、ナノスケール側とマクロスケール側の関連する産学官の研究者・技術者・開発者が「持続可能社会構築に向けてどんな課題を克服し、何を実現すべきであるのか」といった目標を共有し、関連学術分野や学会、応用分野、産業界の研究者・技術者・開発者が集まって議論する場と、常に情報共有を可能にするネットワーク環境を構築することが必要である。

※本文記載のURLは2019年2月20日時点のものです。

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