2018年3月
(戦略プロポーザル)反応・分離を技術革新する電子・イオンの制御科学 ~持続可能な反応プロセスを目指して~/CRDS-FY2017-SP-04
エグゼクティブサマリー

 本戦略プロポーザル「反応・分離を技術革新する電子・イオンの制御科学~持続可能な反応プロセスを目指して~」は、エネルギー利用や物質生産時に必要になる革新的な化学プロセスに資する反応・分離技術に関する研究開発戦略の提案である。具体的には電気、光、電磁波や低位熱などのエネルギー源を活用した反応や反応場分離を活用した分離など、電子やイオンを能動的に制御することで、反応の速度と選択性の両立を可能にする革新的反応・分離技術の研究開発戦略である。これにより、従来は高温高圧条件であった反応を大幅に緩和する、多段であった反応を一段にする、あるいは分離操作を不要にすることで、化学プロセスの簡素化やエネルギー消費の大幅削減を実現するとともに、その先の持続可能な炭素・水素循環社会の実現に資する技術革新につなげることができる。

 COP21合意を受けて、我が国では温室効果ガス排出削減の中期目標として2030年度に2013年度比26%減の水準の達成、さらにその先の長期的目標として2050年までに80%削減を目指すことが示された。また究極的な目標である持続可能性社会の実現のためには、現状の化石資源に依存したエネルギー・物質利用の流れからの脱却が必要となる。これらを実現していくためには、炭素・水素の循環的利用を可能にする技術への取り組みが重要になるが、このスキームを考えると、CO2や水などの化学ポテンシャルの低い物質が主原料となるため、大きなエネルギーが必要なアップヒル型反応(吸熱反応)が必要になる。このようなアップヒル型反応に電気、光などの制御性の高いエネルギー源を活用することは本質的に効率的な方法であり、さらに以下に示す機能・効果を付与・拡充することで、従来の熱的反応では困難であった反応を実現できる可能性がある。

  • ● 熱的反応では高温条件が必要な活性化エネルギーの高い反応であっても、光や電気を活用することにより中低温条件で触媒機能を最大限活かした反応を実現する
  • ● 電場・電磁場などの外場効果により反応速度を向上(活性化エネルギー低下)させる
  • ● 反応場分離により反応と分離を同時達成し単独の分離操作を不要にする
  • ● 反応場分離により平衡制約の反応を非平衡的に進める

 本プロポーザルでは日本および欧米の研究開発動向、長期的な視点、および新しい知見やシーズの芽生えに鑑み、以下に示す研究開発課題の推進を提案する。またこれにより革新的な反応・分離技術の実現を目指すものである。

  • 電気を活用した反応・分離技術:固体イオニクス材料を用いた電気化学
  • 光・電磁波を活用した反応・分離技術:光半導体触媒、光金属錯体触媒、表面プラズモン共鳴、マイクロ波化学とそのための材料開発
  • バイオインスパイアードな反応・分離技術:人工酵素の開発など
  • 熱を含む各種エネルギー源を複合的、融合的に活用する反応・分離技術
  • 電場・電磁場等による外場効果を反応に活用するための研究開発
  • 上記方法に関する新規材料:中低温作動型などの新規イオニクス材料、触媒(電極触媒、光触媒など)、反応場分離のための材料(規則性多孔材料など)
  • 各種反応、外場効果も含めた詳細な反応機構解明などの基礎となる学理の構築

PDFダウンロード

関連報告書