2018年3月
(戦略プロポーザル)革新的コンピューティング ~計算ドメイン志向による基盤技術の創出~/CRDS-FY2017-SP-02
エグゼクティブサマリー

 本プロポーザルは、少子高齢化に伴う様々な問題の解決と安全で快適な生活や活力ある社会(超スマート社会:Society 5.0)の実現、あるいは物理的な世界(フィジカル空間)とコンピュータやネットワーク上におけるデータ、情報などからなるサイバー空間とが高度に融合したサイバーフィジカルシステム(Cyber Physical System:CPS)の実現に必要となる高度な情報処理を可能とする革新的なコンピューティング技術の研究開発課題とその推進方法に関するものである。

 CPSに必要な高度な情報処理システムの実現には、コンピューティングのこれまで以上の高速化・低消費電力化とともに、ネットワークの末端(エッジ)側の機器におけるリアルタイム性やロバスト性、認識・判断といった人工知能(AI)技術、クラウド側に価値ある情報を安全に送るデータ圧縮・暗号化技術などの高度な情報処理技術が必要になる。 一方、現在の情報処理性能向上の担い手である半導体集積回路は微細化の限界に直面しており、従来のCMOSデジタル回路によるノイマン型のコンピューティング技術だけではさらなる性能向上は困難になってきている。このため、従来のコンピューティングのアルゴリズムやアーキテクチャにとらわれない新たなコンピューティング技術の研究開発が望まれる。

 近年はネットワーク・Webの拡大、スマートフォンなど携帯機器の普及、コンピュータの飛躍的な性能向上などにより、ビッグデータ処理による購買分析、材料探索や、深層学習(Deep Learning)などの人工知能技術を活用した画像認識や病気診断などにおいて、新たなサービスを創出する動きが活発になっている。これらはクラウド側での情報処理が基本になっているが、今後はIoT(Internet of Things)の普及により、それらエッジ側における、センサなどからの生データの解析と価値のあるデータへの変換、安全なデータ転送(プライバシー保護、セキュリティ確保)、認識・判断(画像認識、音声認識、危険回避など)などが重要になってくる。このようなエッジ側における情報処理は、超低消費電力性、リアルタイム性、ロバスト性などクラウド側とは異なる特性が要求されるため、これらを実現できる新たなコンピューティング技術に対する期待は大きい。

 今後取り組むべきコンピューティング技術の研究開発課題は、アルゴリズム・ソフト、回路・アーキテクチャ、デバイス・材料の全ての技術レイヤーに関わる。しかし、これらの技術を網羅的に行うのではなく、重要な応用に向けて、時間軸を考慮した計算ドメイン志向により各技術レイヤーから適切な技術を選択し、垂直統合的な技術開発を行うことが社会実装や効率性の点から重要である。

 本研究開発の推進に当たっては、計算ドメインごとの研究開発を垂直統合的に行う体制構築が必要である。これには、技術レイヤーの異なる研究者・研究組織をまとめていくプロジェクト・マネージャー(ドメインスペシフィック・アーキテクト)の役割が重要であり、最適なチーム編成を行い、トップダウン的に技術レイヤー間の連携を深めて一体的な研究開発を進めることが求められる。また、産学官の研究者・技術者が手軽にソフト開発、機能設計、回路設計、ツール開発、ハードウェア試作ができる研究環境の整備が必要である。このような研究環境の利用により、効率的な研究開発ができるとともに、産学官連携の促進、様々な技術レイヤーの研究開発に関心を持つ人材の育成なども期待できる。

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