2018年3月
(戦略プロポーザル)革新的デジタルツイン ~ものづくりの未来を担う複合現象モデリングとその先進設計・製造基盤技術確立~/CRDS-FY2017-SP-01
エグゼクティブサマリー

 「革新的デジタルツイン」とは、基礎科学からの多様な基盤技術の統合化による複合現象モデルの開発、検証に基づく革新的なデジタルツイン技術の創出を目指すものであり、昨今目覚ましい進展を見せるものづくりのデジタル化、およびそれを支える基盤技術に関する研究開発戦略を提案するものである。

 ものづくりのデジタル化を牽引する中核技術として近年注目されているデジタルツインは、デジタルデータを基に物理的な製品をサイバー空間上で仮想的に複製し、将来発生する事象をデジタルの仮想世界で予測することが可能な先進的なシミュレーション技術である。製品・サービスのバリューチェーン全体を通じて高い付加価値が提供されると期待されている。デジタルツインの根幹は複合現象モデルの開発、検証にあり、これに係る技術およびそれを支える先進設計・製造に関する基盤技術の研究開発を産学官が一体となって戦略的に推進することが必要である。その上で、これら成果を日本のイノベーション競争力の中長期的な維持・強化、更にはSociety 5.0で示されている新たなものづくりシステムや低炭素エネルギー未来社会の実現へ繋げてゆくことが求められている。
 また、日本では製造、材料、構造・強度、機械、燃焼、伝熱、流体、振動、化学、電気などのものづくりの基盤技術を担う工学系専門人材が減少しつつあり、個々の研究力においても一部で他国の追い上げを許している。この状況を打破し、日本の多数の工学系分野が再び世界をリードしてゆく素地を整えるためにも、国として一体となった研究開発推進を実行することが求められる。

 ものづくりの革新的デジタルツイン構築に必要な取り組みは多岐にわたるが、複合現象モデルの開発、検証の重要性を鑑み、本提案で取り組むべき具体方策を以下の3つとする。

  • ① 多様な基盤技術の統合化による、基礎的原理解明からの複合現象モデルの開発・検証、および、モデル計算効率化技術開発、
    構築モデルの評価方法の開発・標準化
  • ② ①に資する基礎科学研究からの知識基盤構築
    [物理・化学現象の把握・理解、基盤となる構成方程式の確立、評価データ取得、蓄積等]
  • ③ ②を活用した、ものづくり産業を支える工学系の基礎的原理を理解した人材、科学的合理性に基づき、ものづくりができる人材の育成

 対象とする製品分野・領域は、ものづくり技術の難易度が高く、開発期間・コストが大きい環境・エネルギー・輸送に関する機器・サービス領域を選択するのが有効である。これらは、デジタルツイン活用の効果が大きく、かつ今後の国際市場獲得や、低炭素社会の実現に向けた日本の貢献にも寄与すると期待される。
 本プロポーザルでは、環境・エネルギー・輸送機器の設計・製造や保守(寿命予測)を行う際に必要となるデジタルツインを目標に、機械損傷プロセスモデル、トライボロジーモデル、流体・構造・振動連成モデル、流体・伝熱・燃焼・化学連成モデル、左記統合化モデルの構築と検証などの具体的な研究開発課題を提言する。また、ネットワーク型産学官連携推進体制による、基礎研究から社会実装までを俯瞰した一気通貫の研究開発推進や人材育成、並びに、データ連携共通プラットフォーム創出、国際標準化戦略、規制緩和などの出口戦略についても述べる。

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