2016年3月
(戦略プロポーザル)第5期科学技術基本計画期間において求められる研究費制度改革 ~関連する方策の現状と研究力強化に向けた今後の方向性~/CRDS-FY2015-SP-06
エグゼクティブサマリー

 我が国の研究費制度は、近年大きな構造的変化を遂げてきた。基盤的経費の継続的削減、競争的資金の拡大・多様化、システム改革関連の事業の林立などにより、研究現場に複雑な影響が及んでいることが指摘されている。資金制度を全体としてみたときの制度疲労の兆候もみられ、研究費制度改革が科学技術イノベーション(STI)政策の重要な課題となっている。第5期科学技術基本計画においても「資金改革の強化」の必要性が強調された。

 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)では2014年11月、中間報告書「我が国の研究費制度に関する基礎的・俯瞰的検討に向けて~論点整理と中間報告~」をとりまとめ、研究費制度の改革のためのいくつかの方策案を示した。政府においても大学改革とあわせて研究費制度改革に関する問題意識が高まり、2015年6月には文部科学省の検討会において国立大学法人運営費交付金の改革及び研究費制度改革についてそれぞれ方向性が示された。

 こうして研究費制度改革の動きは進展してきたが、2014年度から2015年度にかけては大学等をめぐる二つの急速な環境変化がみられた。一つは国立大学の財政がこれまで以上に厳しさを増し研究力の低下が懸念される状況となってきたことであり、もう一つは国立大学改革が本格的な実施段階に移行し各大学において自立的な取組みが始まったことである。このような環境変化を踏まえれば、中間報告書の基となった問題意識に加え、そもそも国立大学はその活動に必要な資金源を今後どう確保していくのか、また国立大学の実質的なミッション分化の進展等に呼応した研究費制度が必要ではないのか、といった問題意識が重要になる。

 こうした認識に基づき、本戦略プロポーサルでは以下の改革方策を提案する。これらの方策は、研究費制度の改革に直接的に関わるものと、それに関連したより幅広い観点からの取組みの双方を含む。各項目については、すでに大学側、政府側で取組みが進められつつあるものもあるが、本戦略プロポーザルではその現状を押さえつつ、今後何が求められるかのメニューを整理して議論する。

<改革方策1>人件費改革の推進
<改革方策2>間接経費の確保
<改革方策3>各種教育・研究事業の俯瞰的整理・体系化
<改革方策4>民間資金の導入拡大に向けたグッドプラクティスの案出・共有・実施
<改革方策5>大学病院の役割及び位置づけの見直し
<改革方策6>大学等の収入源の多様化・資金効率の向上に資する国の制度改革
<改革方策7>運営費交付金の機能強化分の充実
<改革方策8>各大学の自立的取組みを持続的に支援する制度への転換
<改革方策9>制度設計に際しての対話の場の確保
<改革方策10>エビデンスの整備と活用

 我が国においては、2016年度から第5期科学技術基本計画及び第3期国立大学法人中期目標期間が始まる。上記の改革方策については、これらの期間中のできるだけ早い時期から検討、実施されることが望ましい。その際には、限られた財政資源の中で国民に対する説明責任を最大限果たすため、高等教育政策とSTI政策のそれぞれの観点を踏まえつつ、局・府省の壁を越えて全体として最適な制度的枠組みを構築することが必要と考えられる。

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