2015年3月
(戦略プロポーザル)反応プロセス革新 ~イオンと電子の制御による中低温域の革新的化学反応~/CRDS-FY2014-SP-05
エグゼクティブサマリー

 本戦略プロポーザルでは、エネルギー変換や化学品合成などの物質生産の基盤となる化学反応プロセスの革新に資する研究開発戦略を提案する。具体的には、触媒化学、電気化学、固体イオニクスを融合することで、化学反応におけるイオンと電子の動きを独立に制御する技術の研究開発を対象とする。これにより、150 〜 600℃の中低温域において反応速度と反応選択性を同時に向上することが可能となり、熱・電気併用の革新的化学反応を実現できる。このような革新的反応を実反応プロセスに適用することで、設備の大幅な簡素化と低コスト化、そして高効率化が可能となる。本研究開発領域はこれまで研究の空白状態となっていたが、近年、鍵となる中低温域作動の固体イオニクス材料の可能性が見え始めたことから、研究開発を重点的に推進すべき時期にある。本戦略を推進し、世界に先駆けて革新的化学反応による物質生産の実現を目指すことにより、我が国の産業競争力強化、低炭素社会の実現に資することが期待できる。
 近年、目覚ましい成果が上がっている燃料電池は、固体イオニクス材料を用いた電気化学反応により、燃料の化学エネルギーを直接電気として取り出すエネルギー変換技術である。一方、化学品合成など、物質生産に固体イオニクス材料を用いた電気化学反応を適用する技術はまだ研究開発が緒についたばかりである。化学品合成における化学反応では、反応速度のみならず、目的とする生成物への高い反応選択性が求められる。また、自発的に進まない反応も存在することなど、燃料電池のような自発反応から電気を取り出す技術とは異なる課題が存在する。本戦略プロポーザルで取り上げる革新的化学反応は、固体イオニクス材料を用いた電気化学反応において、温度と電位による反応制御を高度化することで、反応速度と反応選択性を同時に向上させることを狙いとしている。また、従来高温が必須だった化学反応においても中低温域まで反応温度を下げ、触媒作用を高機能化することで、新しい化学反応が可能になることも考えられる。加えて、中低温熱を反応のエネルギー源として利用することで、コストの高い電気を必要最小限量に抑えることもできる。このような熱・電気併用の革新的化学反応を適用した新しい反応プロセスを構築することで、設備の大幅簡素化・低コスト化やこれまでにない高効率化が可能になる。これは、資源小国の日本における化学産業をはじめとした産業の競争力向上に資する技術になる。さらには、これら技術をエネルギー利用・転換のプロセス技術に拡大することで、排熱回収によるエネルギー利用の格段の高効率化をもたらし、低炭素社会の実現を加速すると期待される。
革新的化学反応の研究開発を推進するためには、中低温域で作動する固体イオニクス材料が必要となるが、これまで良い材料がなく、本格的な研究開発は行われてこなかった。しかしながら、最近になって中低温域で作動する固体イオニクス材料として候補となる材料(新規材料としてナトリウムチタネート系酸化物、あるいは格子ひずみ効果の利用など)が見出されており、これら材料の研究開発も含めた本格的な研究開発を開始できる状況にある。
 研究開発には、中低温域作動の固体イオニクス材料の研究開発、電極触媒の物質探索や機能強化、さらにはこれらの研究開発を支援するための分析技術、計算科学による反応機構解明など、基盤的な技術の研究開発が同時に必要である。また、具体的な化学反応プロセスに適用するための応用研究が非常に重要であり、これらのことから触媒化学、電気化学、固体イオニクスのみならず、機械工学、化学工学、プロセス工学、その基盤技術を支える分析科学、計算科学などを巻き込んだ広範な研究領域の協同が求められる。本プロポーザルの実施により、学際的にも多くの研究領域の融合による領域拡大が期待される。

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