2014年6月
(戦略プロポーザル)課題解決型研究開発の提言(3) ヒトの一生涯を通した健康維持戦略-特に胎児期~小児期における先制医療の重要性-/CRDS-FY2014-SP-03
エグゼクティブサマリー

本提言は、人々が一生涯を通して健康である社会を実現するための科学技術戦略として、 胎児期〜小児期の環境要因と将来の疾患発症との関係性に着目した、胎児期〜小児期における先制医療の推進方策を提言するものである。
近年、先制医療と関連する科学的知見が急速に蓄積していることから、最新の動向を踏まえた研究開発戦略、および社会実装の方策を検討した。先制医療の対象となりうる慢性疾患の発症時期は、疾患(糖尿病、アルツハイマー型認知症、骨粗しょう症、がんなど)によってそれぞれ異なることから、疾患発症リスク因子(バイオマーカー)の蓄積も異なる経時パターンを示すものと考えられる。より効率的・効果的な先制医療を実現するためには、ヒトの一生のどのような時期・期間に、どのような種類、強さの疾患発症リスク因子が存在するのかを網羅的に同定し、それら複数の因子を時系列で解析することによって、より精度の高い疾患発症リスク評価技術(遺伝素因、バイオマーカー)を確立することがまず重要である。そして、リスクに応じた予防的介入技術(生活習慣 の改善(食事、運動など)、医薬品ほか)の迅速な確立も必須である。また、費用対効果の観点もきわめて重要である。
先制医療で着目すべき時期・期間について、近年重要な知見が次々と得られている。欧州で数十年にわたって実施された出生コホート研究などから、胎児期〜乳幼児期の環境要因が、肥満、心代謝疾患(糖尿病、心血管疾患など)、発達障害、精神疾患などと相関することを示唆する知見が次々と見出されている。これら疾患群は、いずれも日本及び世界で今後ますます深刻な問題になると考えられていることから、きわめて重要な知見であると言える。
以上の背景を踏まえ、より具体的な研究開発戦略についての検討を重ねた結果、胎児期〜小児期の環境要因と将来の疾患発症との関係を見出し、その背景に存在するメカニズムを解明し、それら基盤的知見をもとに先制医療技術を確立させ、倫理・法律・社会的問題(ELSI) やコストの観点も考慮した上で社会実装を加速させるための方策が重要であるとの認識に至った。
今後推進すべきと考えられるテーマは次の3つに大きく分類される。また、3つのテーマ の共通重要事項として、中長期的な視野から全体を統括する中核機関や組織の設定、人材確保・次世代育成、ELSI の観点からの適切な取り組み、が挙げられる。
●疫学研究基盤(コホート、バイオバンクなど)の整備、運営、活用
●基礎・基盤的ライフサイエンス研究の推進
●社会実装に向けた研究開発の推進、社会実装に伴うインパクト評価

本提言の推進を通じて、胎児期〜小児期における疾患発症リスク因子の蓄積が最小化し、 より多くの子ども達の健康な成長、そして中長期的観点からの QOL の大幅な向上が実現する。また、胎児期〜小児期の時点で疾患発症リスクを定量的に把握しておくことで、例えば 成人期により精度の高い疾患発症リスク評価・介入が可能となる。国民が自身の疾患発症リスクや予防的介入の選択肢を把握することで、日々の生活のあり方などを通じて、自己実現 の可能性を高めていくものと考えられる。健康教育を通じた国民の予防に対する意識の高まりは、医療費、介護費の高騰の抑制、最適化にもつながると考えられる。

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