2014年6月
(戦略プロポーザル)課題解決型研究開発の提言(2) 強靭で持続可能な社会の実現に向けた社会インフラ統合管理システムの研究/CRDS-FY2014-SP-02
エグゼクティブサマリー

本戦略プロポーザルでは、強靭で持続可能な社会の実現に向けて、社会インフラに関する様々な課題に対する、より本質的な解決を目指し、「社会インフラ統合管理システム」の基盤研究と「メンテナンス科学技術」の研究開発を、わが国として戦略的に推進することを提案する。現在、わが国にはすでに膨大なインフラのストックが蓄積されており、維持管理や補修・補強などのメンテナンスのコストが急増するとともに、老朽化に伴う事故や 障害も頻発している。このような課題に対応するための施策や研究開発は、既に産官学において様々に取り組まれているところであるが、本提言では、より中長期的な視点から、社会インフラを持続可能とするための総合的な対策の実施に資する基盤と、産官学のいずれにおいても十分な取り組みが成されているとは言い難い、社会インフラのメンテナンスに係る科学技術の基礎的研究の推進を提案するものである。これによって、将来にわたって国際競争力を確保しつつ、強靭で持続可能な社会へ進化することを目指す。

社会インフラを強靭化し、持続可能とするための設計方式やメンテナンス方法論は、短期間に獲得できるものではないが、我々はそれに向けて効率のよい努力を払うことが必要である。本戦略プロポーザルは、将来的なメ ンテナンス方法論の体系化、さらにはメンテナンス科学の確立を目指し、そこに至るためのマイルストーンの第一歩としての研究開発戦略について分析と提案を行う。現時点における、メンテナンスに係る科学技術上の課題を端的に整理するならば、インフラの状態を把握し 残る寿命や強度を推定し、次に補修をすべき優先順位と費用とを合理的に意思決定するシステムと、それらを支える論理が存在していないことである。メンテナンス科学は、補修の最適な時期と方法とを見極める高度な技術の達成に寄与すると考えるが、現段階ではまだ理想であり、次善となる経済的かつ合理的なアプローチは、技術とデータに裏打ちされた計画的な取組みである。
本戦略プロポーザルは、以下の3つの項目への取り組みを提案するものであり、特に様々な研究開発や効果的な社会インフラのライフサイクル管理の共通的なベースとなる、「社会インフラ統合管理システム」の基盤研究を「最初の一歩」として提案する。
(1) 目指すべき「強靭で持続可能な社会ビジョン」の 描出
(2) 社会インフラの「ライフサイクルとプロセス」のデザイン
(3) 社会インフラのライフサイクル管理を支援する「統合管理システム」の設計
・インフラの施工情報や維持管理情報などを核とした、インフラ統合DBの設計
・ライフサイクル統合管理システムの試験的な構築・運用
・統合管理システムを活用した要素技術の研究の推進
(例:インフラの状態把握と余寿命予測や、効果的かつ効率的なインフラ維持管理・更新方式の研究開発、災害時の修繕や復旧にも適用可能なシステムの実装など)

ここで目指す、社会インフラのライフサイクル管理の技術体系と統合管理システムは、人間と社会、および環境の視点を取り入れたわが国独自の技術となり得る。また、ライフサイクル管理に関しては、大規模災害発生時に備え、平常時から緊急時へのスムーズな移行に加え、システム構造や機能の優先順位を変化させながら最適化を図る仕組みについても検討する。同じ統合管理システムを用いて、災害時の修繕や復旧にも適用可能なライフサイクル管理方式の実現を目指す。
これらの研究開発成果を社会に実装し、運用と改善の実績を重ねた統合管理システムは、蓄積された運用・保守・検査の実データとノウハウとともに、老朽化するインフラを抱える先進国への国際ビジネス推進に大きなインパクトを与えうると考える。また新興経済圏支援の安心・安全な社会の基盤としての展開も期待される。

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