2014年6月
(戦略プロポーザル)課題解決型研究開発の提言(1) 都市から構築するわが国の新たなエネルギー需給構造/CRDS-FY2014-SP-01
エグゼクティブサマリー

本提言は、エネルギーに関する課題解決型の研究開発、特にわが国の都市におけるエネルギー利用・消費の高効率化を課題とした研究開発の在り方について提案するものである。
市民生活に伴うエネルギー 需要が集中して存在する場である都市は、わが国はもちろん、海外諸国においても、エネルギー消費の削減余地や利用形態を精査する対象として重要である。今後持続可能な社会の構築に向けて、特にエネルギー需給の観点から都市を改めて精査し、果たすべき役割、またその実現における科学技術の貢献を明らかにする必要がある。
本提言では、都市の特性を把握、 整理するために、都市でのエネルギー利用に影響を及ぼす人口動態、エネルギー関連技術の進展や社会変化、そして都市ごとのエネルギー消費の傾向、の3つの観点から、現状の都市および 2030 年頃の都市の将来像に関する課題等について検討した。都市の現状と将来像を踏まえると、都市におけるエネルギー問題に取り組む基本的な方針は、「高効率化」、「低炭素化」、「平準化」に集約される。
エネルギー利用のあるべき将来像の実現に向けた方策の組み合わせは、理想的には都市ごとに異なる。しかし、エネルギーという観点からは、とりわけ科学技術による顕著な貢献が期待できるような方策という点では一定の汎用性を持つものも多く、共通する方策群がありうるエネルギー損失を大幅に削減し、再生可能エネルギー・未利用エネルギーの導入を拡大し、変動する需給バランスの調整を実現する方策群としては以下に示す9つの方策がある。
エネルギーネットワーク上での需給調整
住宅での省エネルギー促進と再生可能エネルギー利用
建築物での省エネルギー促進と再生可能エネルギー利用
未利用エネルギーの地域利用促進
土地利用や空間配置の見直し
内燃機関の燃費向上と次世代自動車の普及促進
都市内の交通流の改善
多様な交通手段の使い分け
配変電ロスの低減

なおこれらの方策の実施には、既存の技術やシステムの活用も望まれるが、中長期的には革新的な材料、技術、システムと、それらを社会の中へ導入、定着させるための社会化技術の組合せが必要である。とりわけ社会への量的、質的な波及効果が大きく、かつ2030年頃を見据えて国が主体的に取組む必要があると考えられる研究開発領域は、以下の5つにまとめられる。

A 高次・多層的なエネルギーマネジメントシステムの構築
B 都市部街路における自動車交通の効率化
C 都市内での創エネルギー・省エネルギー促進
D エネルギーとそのコベネフィットの観点を加えた都市設計
E エネルギー利用ビッグデータの活用

本提言は、多くの国民が暮らす都市という枠組みから社会全体のエネルギー需給を構想することで、具体的かつ大胆なビジョンと目標を提示し、課題解決の政策的インセンティブを高めることを意図している。その研究開発、社会導入実施に向けては、国や自治体がイニシアチブを発揮し、大学や公的研究開発機関、さらには民間企 業が有機的に連携する体制を組織して、課題解決に向けた総合的な取り組みを進めることが必要である。
特に、研究開発の実施にあたっては、関係者がビジョンを共有し、参加インセンティブを得ることができ、さらに異なる学術分野や研究開発フェーズ間での連携を円滑に行うことができるようにするための共通基盤が必要である。また得られた研究成果の有効性の評価・検証を行うため、エネルギーシステムを模擬的に再現した実証系の整備や、実地域をフィールドにした研究開発の実施を支援できる仕組みを、予め組み入れることも合わせて 検討すべきである。なお、限られた国の資源を有効活用するという観点からは、既存の研究開発の仕組みや特区制度のような枠組みを利用することも考えられる。

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