2014年2月
(戦略プロポーザル)東京オリンピック・パラリンピック2020の先を見据えて/CRDS-FY2013-SP-04
エグゼクティブサマリー

本提言は、
・東京オリンピック・パラリンピック(Tokyo Olympic and Paralympic Games: TOP)が開催される2020年を21世紀における持続可能な社会の実現のための様々な社会経済システム改革の重要な転換点として捉え、
■オリンピック・パラリンピックの準備・運営に際し、TOPと科学技術イノベーションとの間でどのような相乗効果が可能かを提示し、
■オリンピック・パラリンピックを契機に、学問領域を超え、今後の科学技術と社会との関わりについて、科学技術コミュニティから更なる意見の喚起や積極的な関与を促すことを目的にまとめたものである。

2020年TOPにおいて、スポーツ、競技者が主役であることは言うまでもないが、オリンピックと科学技術の関わりを考える際、放送技術、IT、セキュリティ・防災、環境マネジメント等オリンピックと科学技術イノベーションとの間で大きな相乗効果が働くことを我々は認識すべきである。

日本は、大量生産・大量消費・大量廃棄の20世紀型社会経済からスマート・高効率・低環境負荷の21世紀型社会経済へのいち早い転換が求められている。
TOPが開催される2020年は、奇しくも日本の重大な転換点に位置している。2020年を社会経済システムの転換に向けて体制準備を完了すべきマイルストーンの年と位置付け、TOP開催に貢献しうる研究開発等を加速化し、また、2020年以降を見据えた準備として、以下のような事項の検討、実施に着手すべきである。

(1)ホスト国の責務として進めるインフラ整備は、自然災害、人為的攻撃の双方に対して強靭さを備えるべきである。社会の転換期に開催されることに留意し、PFI、PPPを積極的に活用しつつ、大会終了後も経済・社会効果が持続するよう、既存のインフラ、社会システム等のリノベーションが誘発されるような政策展開を図るべきである。コンパクト、機能性、環境共生等日本の技術が継承してきた文化、価値観に科学技術による革新を加え、交通、通信等のインフラのスマート化、エネルギー利用の高効率化等、中長期的に必須な社会課題に対する研究開発の加速化と、社会科学からの視点も入れた検討を進めるべきである。

(2)オリンピックが持つグローバルという価値は我々も共有すべきである。テレビやインターネットの向う側にいる40億人の大会視聴者は、産学が結集して開発した日本の最先端技術で魅了しよう。外国人観光客に対しては、サイバーフィジカル、人とシステムの協奏を加味して設計したインターネット上の情報サービスにより、交通、天気、観光等の情報が快適に入手できるようにすべきである。
(3)パラリンピック開催を契機に、身体障害者や高齢者の社会進出を促す技術開発を進めることで、それらの技術開発が広く一般の生活者の質を向上させるものにシフトする可能性があることを改めて認識すべきである。

(4)TOP2020を一過性のものに終わらせないためにも、2020年に向けて、スポーツの分野だけでなく各分野において、世界を舞台に活躍するような青少年を育成することが重要である。科学技術については、次代の研究者・技術者として期待される高校生、大学生、大学院生には、各科学オリンピック、技能オリンピック、ロボットコンテスト等への参加や海外留学等を通じて、国際体験の機会の増加に努めるとともに、小、中学生に対し、科学技術についてもスポーツのような感動・躍動感・共感・参加したい気持ちが感じられるようなキッカケ作りを今後とも増やすことが必要である。

(5)オリンピックやパラリンピックの選手の「目標」は設定しても「限界」は設定せずに挑戦するスタイルは、地球や資源の有限性から生じる様々な課題に直面している科学技術関係者も含め学ぶ点がある。「科学は終わりなきフロンティア」であり、地球・資源の有限性を超えていく意思・熱意を表に強く出すとともに、技術の社会適用の正負の側面を考慮し、統合的視点を滋養することが重要である。さらに、2020年は、人間の肉体機能だけでなく、思考や意思決定の一部が人間から機械とコンピュータによる知能に代替可能な時代の入口である。何をロボットやコンピュータに任せるかが非常に大切になってくる。人間の「考える」「判断する」能力の大切さが一段と問われることになることを認識して、科学者・技術者は研究開発に取り組むべきである。

(6)2020年のTOPに向けて、国民の間で、スポーツ科学、健康科学等身体に関わる科学技術については関心が高まると思われる。その他の分野も含め、一般の人々が先端の技術や社会に役立つ技術を見たり触れたりする機会を増やし、科学技術コミュニティに属する者と一般国民との間の垣根をなくしていくことが必要である。技術をどう活用するか、どういう社会ルールを作るか、どのような社会にしたいのか、人文・社会科学者も積極的に関与し、国民的議論を喚起することが必要である。

(7)東北地域の被災者が日常を取り戻すことがTOP開催の前提というのが国民の共通認識である。当センターの「東日本大震災からの復興に関する提言」(2011年5月)の着実な実施が望まれる。

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