2013年3月
(戦略プロポーザル)課題達成型イノベーションを実現するための研究開発ファンディング・システム ~研究開発のネットワーク化・組織化~/CRDS-FY2012-SP-09
エグゼクティブサマリー

 近年、内外の公的な研究開発ファンディング・システムをめぐる状況は大きく変化してきた。世界的にみると、グローバル化が巨大な社会変動をもたらす中で、国際競争と国際連携の双方の観点から研究開発ファンディングのあり方を再構築することが求められている。また、各国においては、イノベーション重視や国民に対する説明責任の強化といった流れに対応した制度改革が進んでいる。我が国についてみると、政府研究開発投資の総額が伸び悩む中、基盤的経費の削減、競争的資金の拡充、大型研究費制度の増加等が、大学・公的研究機関等の経営及び研究現場に様々な影響を及ぼしてきたことが指摘されている。このため、特に最近は研究開発ファンディングのあり方に対する関心が集まり、各方面から重要な政策文書・提言等が相次いでいる。
 一方、我が国は現在、経済の長期停滞、国際競争力の低下、少子高齢化の進展、環境・エネルギー制約の深刻化、大震災からの復興・再生等、数多くの社会的課題に直面しており、科学技術がこれら課題の解決に貢献することへの強い期待がある。こうした期待を背景に、2011年8月に閣議決定された第4期科学技術基本計画では社会的課題の解決・達成が科学技術イノベーション政策の基本的方向性として位置づけられたところである。
 本戦略プロポーザルでは、各方面からの指摘を踏まえつつ、課題達成型イノベーションの実現という目標に対応する研究開発ファンディング・システムの構築に向けて必要な制度改革の諸方策を提示する。その基調を成す考え方は、研究開発ファンディングの基本的方向性を競争的環境の形成から研究者・研究機関のネットワーク形成及び研究・イノベーション能力の最適な組織化にシフトしていくということである。そのような改革を通じ、限られたリソースの下に国全体のポテンシャルを最大限に発揮して課題達成の実現を図るとともに、研究者及び幅広い分野の専門家・実務家が持てる能力を存分に発揮する体制を構築することが必要である。そのための具体的な提言項目は次に示すとおりである。
提言1 国全体の視点に立脚した効率的なファンディングの実現
1ー1 ファンディング機関の役割と責任
1ー2 PD/POの役割と責任
1ー3 設備・機器の有効な活用
提言2 研究開発実施・支援体制の抜本的強化
2ー1 社会との信頼関係の確保
2ー2 総合的・安定的な体制の構築
2ー3 関連人材の確保
提言3 課題達成を促進する評価システムの構築
3ー1 段階的審査方式の導入
3ー2 評価の有効性・信頼性の向上
 国の科学技術イノベーション政策の実施にあたり研究開発ファンディングが果たす役割は極めて重要である。上記各提言項目の主たる実施主体である各ファンディング機関は、相互の協力関係を深め、政府及び研究者コミュニティと密接な連携を確保し、また産業界をはじめとする幅広いステークホルダーの関与を得ながら、必要な制度改革に向けた取組みを強力に進めることが望まれる。

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