2013年3月
(戦略プロポーザル)デジタルデータの長期安定保存のための新規メモリ・システムの開発/CRDS-FY2012-SP-07
エグゼクティブサマリー

本提言は、今後の情報爆発時代に急激に増加すると予想されるデジタルデータを長期間安定に保存し、かつ読み出しと意味理解を保障(※)する「新規メモリ・システム」の開発に関するものである。
現在のデジタル情報社会を支えている電子技術開発は、情報処理を行う技術開発に集中しており、情報を長期的に保存する技術に対する認識は不十分である。その結果、データの保存期間は10 年程度しか保証されておらず、歴史、文化、科学情報など後世に残す事に意味のある情報の継承が危ぶまれている。本提言では、この状況に対処すべく、信頼性の高い超長期保存メモリ・システムを開発するための重要研究開発課題とその推進方法を提案する。保存期間の目標としては、まず、100 年程度をターゲットとし、その実用化を踏まえて、次のステップとして、500 年から1000 年程度を目標とする。
超長期保存メモリ・システムに要求される機能や性能を実現するためには、最上位層の商品ビジネス系(アプリ、応用ソフト)から情報系(標準化、基本ソフト)、システム系、回路・設計、デバイス、製造プロセス、そして下位層の材料まで、技術階層毎の研究開発課題を全て解決する必要がある。これらの解決に向けては、それぞれの技術階層内だけでなく、技術階層間で連携・協力し整合の取れた形で研究開発を進めていく必要がある。
具体的な課題としては、商品ビジネスでは、普及のための条件、開発戦略の検討、ビジネスモデルなどであり、情報系としては、チップ内に書き込まれるメタデータのスキーム、フォーマットの永続性の保障、ファイルシステムの検討およびこれらの標準化へ向けての検討などである。これらの課題は、読み出しと意味理解の保障のために重要である。システム系・回路・設計に関しては、アダプタ概念の導入、改ざん防止技術の開発などであり、製造プロセス・デバイス系に関しては、チップ全体としての信頼性保証技術、超長期保存メモリに適したプロセス技術の開発、パッケージ技術の開発などである。材料系については、腐食しない配線材料と腐食しないパッド材料の開発が、腐食メカニズムの解明と共に挙げられる。
現在、デジタルデータを長期保存するには、定期的にデータをシステムごと移行する方法(マイグレーション)が行われているが、今後、データの急増に伴いマイグレーションを含めた保存費用が膨大になり、将来はマイグレーションを行い続けることが困難になる可能性がある。従って、マイグレーションフリー、メンテナンスフリーの保存手段が、究極的には必須になると考えられる。本提案が実現すると、将来の経済効果として、用途的に近いと考えられる今の光ディスクドライブの市場規模から推定して(ボーン・デジタルのコンテンツ量の数%程度)、20〜30 兆円の市場規模が見込まれる。
関係者の共通認識を醸成した上で、国としての戦略を構築し、国際標準化や世界市場を視野に入れてしかるべき施策をできるだけ早い時期に開始することが適当である。

※ 意味理解の保障:デジタルデータ本体はビットストリームなので、これだけでは何の意味か理解できない。データの構造などをメタデータとして与え、データの解釈が出来るようにすることをいう。

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