2013年3月
(戦略プロポーザル)社会生態系モデル ~「生物多様性の科学」に立脚した地域の政策形成に関する実証研究~/CRDS-FY2012-SP-04
エグゼクティブサマリー

人間の社会活動や経済活動の拡大による生物多様性の減少が、生物や生態系が適応できる速度を超えて進んでいる。これにより人間社会は、生態系から受ける様々なサービス(生物多様性から得られる社会経済的効果)が損なわれていくという重大な危機に直面している。本戦略プロポーザルでは、このような人間活動に起因する生物多様性の減少にフォーカスし、生態系から受けるサービスの持続的な利用を目的とした戦略的な研究開発を「社会生態系モデル」として提案する。

「社会生態系」とは、人類と自然が共生する持続的な社会を表す概念である。このような理想の社会の実現は、人間活動と自然環境の良好な関係によって成立し、人間の節度ある自然利用が肝要とされている。「社会生態系モデル」はこのような持続社会の地域モデルの構築に関する研究戦略である。ここでは、自然環境の構成要素である生物多様性に焦点をあて、その「科学的な知見」に立脚した政策形成等から望ましい社会像を構築するための包括的な戦略研究を提案する。

本プロポーザルで生物多様性の政策形成に科学的な知見を活用する研究開発を提案する理由は、国内外で生物多様性に関する科学的知見の蓄積や統合が進みつつあり、また、保全に対する社会的要請も高まりを見せているからである。実際、国際機関等では、これに呼応するかたちで科学的知見の政策への活用についての議論がはじめられている。しかし、生物多様性の科学に基づいた政策形成の実施は容易ではなく、とりわけ生物多様性から生み出される社会経済的効果の定量化や施策を実施する際の合意形成などが障害となると考えられる。そこで本書では、これらの課題にフォーカスを当て、対応に資する研究開発の 推進により、人と自然の永続的な共生関係を可能とする「社会生態系モデル」の構築を目指す。具体的に提案する研究開発は、生物多様性に関わる1.政策ツールの開発、2.ツールを活用した政策シナリオの作成、そして、3.施策実施後の評価および管理技術の開発、の3つである。1.のツールの開発では、生物多様性と生態系サービスの定量解析に基づき、それぞれの将来予測を行うモデルを構築する。また、2.の政策シナリオの作成では、モデルに基づく将来予測から課題を発見し、その対応技術や対応を円滑に実施するために必要な法制度に関する検討を行う。さらに、3.の施策後の評価では、政策の効果を科学的に分析し、課題に関する新たな対応技術等の開発を行う。

本戦略研究の推進上のポイントは、上記の研究開発が生物多様性に関わる多様な主体の参画(科学者、地域住民、開発事業者、自治体職員、NGO/NPO 職員など)によって実施されることである。住民等は本研究開発への参加により、生物多様性の科学的な理解を深めると同時に、その社会経済的価値や持続利用に関する重要性を認識することができる。また、多様なステイクホルダーの参加による生物多様性の情報収集や提供は効率的な研究成果の創出を可能とし、関係者間での合意に基づくスムーズな施策の導入を促すなどの効果も期待される。

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