2013年3月
(戦略プロポーザル)ライフサイエンス研究の将来性ある発展のためのデュアルユース対策とそのガバナンス体制整備/CRDS-FY2012-SP-02
エグゼクティブサマリー

ライフサイエンス分野の研究においては、近年、特に分子生物学の発展により潜在的なデュアルユース(用途の両義性)の可能性が高まっている。
本プロポーザルは、ライフサイエンス研究を対象として、その発展がわが国のみならず、広く世界の人々の健康長寿や地球環境保護に持続的に寄与できる仕組みを整備する為に、科学技術のデュアルユース対策とそのガバナンス体制整備について提言するものである。
また、提言の対象は、府省等行政機関、資金配分機関、学会などの研究者コミュニティ、大学・研究機関、研究者個人・研究室としている。ライフサイエンス研究成果の最終享受者であり、また、研究成果の悪用・誤用の最大の被害者ともなり得る国民に対しては、実施努力を伴うような具体的提案項目を設けず、上記ステークホルダーによる取り組みによって、ライフサイエンス研究開発の円滑な社会実装の成果を国民が享受できる体制作りを優先している。

本プロポーザルにおいて提案するデュアルユース対策とそのガバナンス体制は次のようにまとめられる。

1.府省等行政機関
デュアルユースに関するわが国としての統一的な対応方針の策定とその共有
デュアルユースの懸念ある研究事業の迅速な把握、府省間の情報共有、ならびに研究プロジェクトの適切な事前評価と進捗管理体制の整備
2.資金配分機関
関連事業におけるデュアルユースの懸念ある研究課題の適切な把握、事前評価、ならびに進捗管理体制の整備
新たな研究事業などの構築におけるデュアルユースの懸念の検証と対応策の提示
ファンディングを通した、研究者ならびに大学・研究機関におけるデュアルユース対応の喚起、実施状況の把握、評価科学メディアに対するデュアルユースリテラシーの習得機会の提供
3.学会などの研究者コミュニティ
デュアルユースに関する専門家集団としての対応方針の策定
コミュニティへの啓発
自主的な指針の策定と遵守
学術論文の査読体制の整備
科学メディアに対するデュアルユースリテラシー習得機会の提供
4.大学・研究機関
機関レベルでの安全・安心が担保される「管理」体制の整備
研究従事者(大学においては学生を含む)を対象としたデュアルユースの「啓発・研修・教育」の実施
科学メディアに対するデュアルユースリテラシーの習得機会の提供

5.研究者個人・研究室
デュアルユースに関する意識を持って研究に携わること
セキュリティ面、ならびに研究室レベルでの安全・安心に配慮した実験(実験手技・手法及び成果)の管理
成果公表とそれに伴うプレス発表などにおける「専門家としての説明責任」の実践
上記提案により、広範なライフサイエンス研究領域における学術研究・技術開発の現場において、デュアルユースに関する意識向上がはかられ、研究者ならびに大学・研究機関のバイオセーフティ、バイオセキュリティの一層の充実が見込まれる。また、各ステークホルダーがデュアルユースの啓発、研修機会を多階層において提供することにより、学術研究の成果をより的確かつ誠実に社会実装へつなげていくことができる。そして、科学メディアを介した国民への研究成果の説明責任の実践を通して、ライフサイエンス研究の最終的な受益者である国民の安寧な生活の実現への寄与が期待できる。

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