2012年3月
(戦略プロポーザル)二次元機能性原子薄膜による新規材料・革新デバイスの開発/CRDS-FY2011-SP-10
エグゼクティブサマリー

本戦略プロポーザルは、近年注目を集めている、グラフェンを始めとする二次元機能性原子薄膜を用いた新規材料やナノシステム・革新デバイスの研究開発に関するものである。
「二次元機能性原子薄膜」とは、原子の二次元的結合構造、あるいは、それと等価な二次元的電子状態を表面・界面などに有する機能性を持った薄膜物質と定義して用いている。これらは、従来のバルクや単なる薄膜とは異なる特性・構造を持ち、新しい機能や従来材料の特性を凌駕する機能を発現することが可能であり、新規材料やデバイスの開発につながることが期待されている。
本研究開発を実施することで、次世代の電子デバイス・システムに求められる大幅な低消費電力化、小型化およびそこに付加される新機能の創出が期待される。それにより、わが国のエレクトロニクス産業および次世代の電子デバイス・ナノシステムに供される関連産業の国際競争力の強化を図ることが可能になる。この分野は正に現在国内外で研究が沸騰し始める状況にあり、今後日本がこの分野で先導的な役割を果たすためにも、早めの国家的な研究開発施策を実施することが必須と思われる。
提言する具体的な研究開発課題は、「アプリケーション・ニーズに応える機能性原子薄膜による革新デバイス基盤技術の創出」と「シーズ技術の先鋭化に資する新構造原子薄膜の機能研究とデバイス設計学理の創出」の二点に集約される。アプリケーションからの明確な機能への要求に基づく課題と、その要求に応えるシーズ技術課題の、重層的な研究開発が求められる。アプリケーションを目指した研究開発はグラフェンを代表として、透明電極、導電性薄膜、LSI用の配線、センサー、高速電子デバイスなどへの応用を目標とする。シーズ技術に関する研究テーマとしては、原子薄膜に関する様々な要素技術、特に機能性原子薄膜の合成技術、結晶成長技術、加工プロセス技術、計測・分析・評価技術、探索理論解析・シミュレーション技術などを対象とする。
このような重層的研究開発を実施することで、実用技術開発により得られた技術を基礎研究へフィードバックすることが可能となり、その結果新たなゲームチェンジングテクノロジーの創出につながることが期待される。
本提言に掲げる目標を実現するためには、いくつかの戦略的な研究開発の推進方策が必要となる。
国際的な研究開発の競争がますます激しくなる中で、研究開発の投資効率を可能な限り向上させ、実用化までの開発のスピードアップを図るための共通インフラとして、TIA(つくばイノベーションアリーナ)の活用を提案する。現在ナノエレクトロニクス関係だけで100名程度(TIA全体で約300名)の企業研究者が参加しているTIAを中心としたプロジェクト型研究とJSTなどの公募型プログラムによって構成される施策を連携して実施することで、当初から産業界と一体的な産学独連携研究開発の推進が可能になる。プロジェクトの内容検討に当たっては、文部科学省、経済産業省および各関連する独立行政法人とも十分な連携をとった上で、産業界の意見を取り入れ、実用化へ向けた産業界のコミットメントも担保することが必要である。
グラフェンを例にとると、わが国の研究開発施策は欧米に比較して不活発であり、この分野における国際的な貢献も低いとの声が大勢である。しかしながら、日本は材料分野の研究では国際的にトップレベルであり、機能性原子薄膜研究では、物理学者と化学者の連携・融合が核心であることを考えると、今後のわが国の取り組みとして、周辺分野との融合、応用分野との垂直連携を基軸とし、さらに人材育成や国際連携も視野に入れた大型の国家プロジェクトやプログラムを推進すべきである。二次元機能性原子薄膜の研究開発の進展により、将来的には新規材料を使った超低消費電力エレクトロニクスデバイス・システムを実現し、今後の持続性社会実現に強く求められる、省エネルギー、省資源を達成し、社会的期待を充足していくことが目標である。

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