2012年3月
(戦略プロポーザル)政策形成における科学と政府の役割及び責任に係る原則の確立に向けて/CRDS-FY2011-SP-09
エグゼクティブサマリー

政府は、幅広い政策分野において科学的知見を用いた政策形成を行う。科学は政策決定の妥当性及び信頼性を確保するための重要な基盤を提供し得る。21世紀に入り、科学技術と社会・経済との関係が一段と複雑性・不確実性を増す中、政策形成の過程において科学が果たすべき役割は今後ますます大きくなると考えられる。

海外では、近年、科学的知見に基づく政策形成の正当性及び信頼性を確保するための幅広い取組みが進められてきた。米国では、従来より科学的助言のプロセスに関するルールが整備されてきたが、オバマ政権になって政府における科学の健全性を確保するための取組みが加速している。英国では、1990年代後半以降、BSE問題等を契機として政策形成における科学的知見のあり方に関する諸規範の策定が進められてきた。他の多くの先進国や欧州連合(EU)、インターアカデミーカウンシル(IAC)等の国際的な組織においても同様の取組みが進んでいる。
我が国においては、2011年3月に発生した東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故をきっかけに、科学的助言のあり方に関する議論が高まりをみせ、政策形成における科学と政府の役割及び責任のあり方に関する検討の必要性が強く認識されている。2011年8月に閣議決定された第4 期の科学技術基本計画においても、科学技術と政策との関係のあり方に関する検討を行い、基本的な方針を策定することが明記された。
本提言では、政策形成における科学と政府の役割及び責任に係る原則試案を示す。この原則試案は、我が国において科学的助言のあり方に関する認識を高め、必要なルールを熟成していくための幅広いステークホルダーによる議論のたたき台として位置づけられる。そうした議論を経て早期に原則が定められ、さらに関係各機関において独自の指針の策定に向けて検討が開始されることが望まれる。本提言が示す原則試案は次の各項目から成る。

(1) 政策形成における科学的助言の位置づけ
(2) 科学的助言の適時的確な入手
(3) 科学的助言者の独立性の確保
(4) 科学的助言者としての責任の自覚
(5) 幅広い観点及びバランスの確保
(6) 助言の質の確保と見解の集約
(7) 不確実性・多様性の適切な取扱い
(8) 科学的知見の自由な公表
(9) 政府による科学的助言の公正な取扱い
(10) 科学的助言のプロセスの透明性確保

本提言では、さらに、科学的知見に基づく政策形成のための基盤を構築するうえで必要な諸方策を提案する。具体的には、緊急時における科学的助言の態勢整備、原則・指針の普及及び遵守確認、科学技術と政策・社会との関係に関する教育・学習の充実、といった取組みが必要である。すでに政府において検討が進められている科学的助言に必要な体制整備とあわせて、こうした取組みを通して我が国における科学的知見に基づく政策形成の有効性及び健全性の確保を目指すべきである。

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