2012年3月
(戦略プロポーザル)エネルギー政策のための科学:技術・経済モデルの研究開発/CRDS-FY2011-SP-07
エグゼクティブサマリー

「エネルギー政策のための技術・経済モデルの研究開発」とは、様々なエネルギー技術と経済社会活動の相互作用を定量化するモデルを高度化する研究開発領域である。目的は、その成果をエネルギー政策立案や産業界におけるエネルギーマネージメントの科学的根拠として活用することである。本戦略プログラムでは、その基盤となるエネルギー技術・経済モデルに関する基礎研究を強化・支援することを提案する。エネルギー技術・経済モデルは、演繹的にミクロな視点から工学プロセスを積み上げてシステム全体を記述するボトムアップ型の技術モデルと、経済指標などのマクロな集計量の間で経験的に成立する関係式を帰納的に連立させたトップダウンの経済モデルに分類される。しかし、現状では、技術と経済のリンクは十分ではなく、両者を同時に扱えるようにすることが大きな課題である。その実現には、中立でオープンな自立性の高い研究コミュニティーの確立と、その支援が不可欠である。
豊かな持続性社会構築には、供給側だけでなく転換部門から需要側までを広く俯瞰し、地に足のついたエネルギー政策が不可欠である。膨大な化石エネルギー消費を、代替できる単一のエネルギー源は現在のところ存在しない。従ってエネルギーベストミックスを、公平・中立・客観的な立場で幅広く検討する必要がある。一方、有限な研究開発資源を有効に分配するため、現実を見据えたロードマップ形成が不可欠である。エネルギー技術・経済モデルの基礎研究により、これらの議論や判断に資する根拠が、科学的かつ中立な立場から提供される。

技術モデルと経済モデルのそれぞれをより高度化すると同時に、エネルギー技術と経済活動の密接な関連性を踏まえて、両モデルを統合することが極めて重要である。両者の統合に向け、技術と経済社会構造の変化の相互作用を明らかにし、そのメカニズムを解明し、データベースによる検証を行うため、組織的かつ開かれた研究推進が必要である。
わが国の現状のエネルギーモデル研究は、工学と経済学それぞれの分野に留まり、学術分野として未発達である。特定テーマについて研究者を募るような推進方法では、新たな科学の創成は困難である。工学者と経済学者が連携し、中長期の視点からエネルギー技術・経済モデル研究を継続できる中立でオープンな研究環境の醸成が必要である。そのような場としての拠点形成、あるいは学会等の場を借りることで、学際研究を継続的に推進するための支援が求められる。その前提として、政策立案者と科学者が、互いの行動規範を明確にし、役割を尊重し合って健全な信頼関係を作ることも必要である。こうした枠組みにより、様々な専門分野の研究者が集結した新しいマルチディシプリンの学術領域が形成されると共に、正当性あるエネルギー政策立案が可能になる。
また、エネルギーモデルに関する研究は、労力と時間を要する割に必ずしも高い評価が得られず、若手研究者が長期的に意欲を持って取り組みにくい。中立でオープンな場で活躍、交流する若手研究者への政策的な支援によって、次世代を支える人材育成も進めるべきである。一方、若手研究者のキャリアパスも大きな問題である。大学のポストに限らず、政府、地方自治体、産業界にも協力を呼びかけ、エネルギー政策立案やエネルギーマネージメントなどに、専門家としての能力を活用できるような工夫が必要である。
なお、本戦略プログラムによる研究成果は、エネルギー政策立案に限らず、広く他分野にも有用な共通基盤的なものであり、育成される人材も含め、その波及効果は極めて大きい。

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