2012年3月
(戦略プロポーザル)疾患制御に向けた細胞社会の統合的解明/CRDS-FY2011-SP-05
エグゼクティブサマリー

戦略プログラム「疾患制御に向けた『細胞社会』の統合的解明」とは、生体組織の状態を左右する多様な「細胞社会」の構築機序を統合的に解明し、疾患メカニズムの解明につなげてゆくことを目的とした研究戦略の提案である。本プロポーザルでは、生体組織における細胞間相互作用に加え、細胞内外の多様な変化に応じた特性を持つ細胞集団を「細胞社会」と定義する。
生体内には200種類にも及ぶ細胞が存在し、それらが相互作用することにより、高度で多彩な生命現象が営まれている。それは多種多様な細胞が何通りもの組み合わせで複雑な相互関係を築くことにより、ひとつの社会性を持つことを意味する。その細胞の社会性は、細胞を取り巻く環境に応じて様々に変化し、生体の恒常性の維持や破綻にも関与する。特に近年の研究から、一見疾患に無関係と思われる正常細胞が悪性細胞と相互依存関係を構築し、疾患状態の「細胞社会」における構築・維持に影響することが明らかにされてきた。多種多様な細胞が織りなす社会性の構築機序を明らかにしてゆくことは、あらゆる疾患の早期発見と治療に効果的に貢献することが期待される。疾患状態の「細胞社会」の構築機序を正確に捉え、忠実に再現することは技術的に困難であったが、近年この問題を打破する新たな技術が生まれつつある。これらの萌芽的技術を速やかに進展させるとともに、これまで生命の詳細な理解を目指し細分化と専門化が進められてきた基礎研究分野の知見を集約し、「細胞社会」を統合的に解明することを目指す。それにより、「細胞社会」の全容を解明し、複雑な生体内における疾患の発症・悪性化のメカニズム解明を進め、医療の向上から科学技術全体の発展に、さらに日本の産業競争力の強化へと発展させてゆく。

本プロポーザルでは、疾患メカニズムの解明に向けて、研究を推進する。それは、「細胞社会」研究から生まれた医療基盤技術を実用段階まで到達させることを目的とする。

(1)疾患状態における「細胞社会」の理解に向けた研究
・「細胞社会」における構造と機能の解析技術の開発
・「細胞社会」の状態変化が及ぼす疾患メカニズムの解析
(2)疾患状態における「細胞社会」の再現に向けた研究
・疾患の特性を持つ「細胞社会」を培養により再現する技術の開発
・疾患の特性を持つ「細胞社会」を再現したモデル動物の作製

本プロポーザルの推進においては、ある疾患メカニズムの解明という目的の下で、以下のようなチーム型の研究体制を組むことが望ましい。

多様に専門化が進んだライフサイエンス研究領域の基礎的知見を共有する「異分野融合」チーム
疾患の臨床病理の知見を共有する「基礎-臨床医学連携」チーム
医学分野と工学分野の融合による技術開発を可能にする「医工連携」チーム

これらのチーム型研究の進捗に応じて、個々のチーム型研究から生み出された基盤技術を基に、製薬企業・医療機器メーカーなどとの産学連携体制による実現可能性調査や前臨床試験を行う。併行して、「細胞社会」研究を推進するために必要な以下の研究インフラを構築する。

「細胞社会」研究の基盤強化のための、ライフサイエンス領域及び医工系の知見を共有できる拠点の形成
長期的視野に基づいた人材の育成
広く産学共同で利用できるヒト検体ライブラリ、データベースなどの整備

 

本プロポーザルの推進により、ライフサイエンス領域及び医工系の連携による科学技術全体の発展のみならず、アンメット・メディカル・ニーズの充足と医療費削減効果、医薬品、診断機器等の創出による日本の産業競争力の強化につながることが期待される。

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