2011年5月
(戦略プロポーザル)東日本大震災からの復興に関する提言/CRDS-FY2011-SP-02
エグゼクティブサマリー

本提言は、東日本大震災からの我が国の復興に関し、主として科学技術の観点から、どのような寄与が可能か、また、何をなすべきかを取りまとめたものである。
今回の複合的な大災害は、我が国の社会経済システムや市民の価値観に根本的な変革を迫るとともに、21世紀における世界的課題を提起している。復興にあたっては、分野や組織、世代、国境を超えて力を結集する必要があり、科学技術も復興に大きく貢献できる。

科学技術の活用についての基本的な考え方
復興には、多くの科学者の持つ多様な専門的知識を結集する必要がある。
科学者は、被災地域において自治体、被災者等と共同作業を行うことにより、個別分野を超えた、知識の有効な活用方法を見出すことができる。
地域の文化や伝統と最新の科学技術が融合することにより、真の復興が可能となる。
このような知識の活用を通じて、今後の復興に必要とされる、組織や制度の壁を破る力を持ち国際貢献を可能にするロバストでアダプティブな科学的知識を創出できる。
こうした活動を通じて、従来困難であった科学技術のシステム改革を進める。
科学者は専門的知識をもとに助言・提言を行う立場であり、政策決定者や実際の行動者とは責任と役割を分担する。

本提言では、1.被災地域の復興、2.今後のエネルギー戦略、3.今後の災害への対応について検討し、提言を行った。特に重要な点を以下に記す。

1. 被災地域の復興
【科学者の参画】
復興にあたってのニーズ、社会的期待の把握、計画策定、実施には、多くの科学者が参画し、地域との協業による様々な調査、研究活動を行うことが必要。
【被害調査・追跡調査】
環境中の放射性物質による長期的影響調査のため、国際的組織の設置を提案する。
震災の記録の保存、分析のための拠点、各種調査結果のアーカイブの設置を提案する。
【地域社会の再建への貢献】
放射性物質によって汚染された土壌、植物、陸水等の処理、浄化について、海外における知見、技術的蓄積も活用しつつ、総合的、継続的な実施体制をつくることが必要。
新しい街づくりに、科学技術を活用することで、以下のような新しい取り組みが可能。
ハード、ソフトが組み合わされた社会インフラ(エネルギー、水、交通・物流、情報)の全体システム設計
再生可能エネルギーの導入などによる様々な規模でのエコシティ構想の実現
ICT(情報通信技術)を活用した医療、教育の高度化
【研究開発基盤の再構築】
被害を受けた研究開発基盤について、優先度を考慮しつつ、早期の再構築が必要。その際、分野、組織、国境を越えるネットワーク型、課題解決型の研究体制や国際的な情報発信の強化を推進すべき。

2. 今後のエネルギー戦略
開かれた形でのエネルギー戦略の策定及びエネルギー研究開発の継続的推進が必要。
地域の活性化に資するとともに今後のエネルギー需給のモデルとなるような地区を被災地域に実現する。

3. 今後の災害への対応
災害に関する研究開発の成果等が、なぜ実装されなかったのか、検証と改善が求められる。
モデリングやシミュレーションを活用した、平常時と非常時を円滑に接続する災害対応システムの構築が必要。
災害時にもロバストな(変化への耐性がある)情報通信システムの構築が必須。また、情報と社会との関係(情報の信頼性、風評等)についての研究が必要。
災害時医療では、効果的なロジスティックスによる迅速な支援が重要。また、医療マネジメントのための司令塔の設置が必要。

今回の復興への取り組みは、個々の技術、知識にとどまらず科学技術全体としての対応が要求される。また、グローバルな国際協業として取り組むことも必要である。このような要請に応えるためには、我が国の科学技術システムを、様々な壁を越え課題解決のために、人材や資源を最適に結集できるシステムに変えていく必要がある。

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