2011年3月
(戦略プロポーザル)エビデンスに基づく政策形成のための「科学技術イノベーション政策の科学」構築/CRDS-FY2010-SP-13
エグゼクティブサマリー

社会・経済が急激に構造変化する中で、様々な社会的な課題の解決のため科学技術によるイノベーション創出が期待されている。我々をとりまく社会・経済の動向を的確に把握し、課題を発見し、科学技術の現状と潜在的可能性を踏まえた解決の処方を提示し、これらに関するエビデンス(科学的根拠)を総合的に推敲して、科学技術イノベーション政策を形成する必要性が高まっている。また、先進・新興諸国を問わず、国全体の研究開発投資の拡大を目標に掲げる中で、政府投資の経済・社会的影響を分析・評価し、国民にその政策内容を提示し、政策の透明性を高めることが強く求められている。
本提言では、こうした社会の要請に的確に応えるべく、科学技術イノベーション政策の体系的な立案に必要とされるエビデンスを培い、科学的に政策科学の知識を形成する「科学技術イノベーション政策の科学」を構築することと、その知識体系が政策形成プロセスにおける実践の場で活用されるように政策形成システムを進化させることを目的として、この戦略を提言する。

エビデンスに基づいて政策形成するというプロセスでは、エビデンスがもたらす知識体系を社会全体が共有し、多様な主体からエビデンスに基づく複数の課題解決のための政策メニューが意思決定者に提示されること、そして、意思決定が科学的な客観性と透明性を持つことが要求される。したがって、政策形成プロセスでの意思決定者の社会との対話が不可欠であり、政策決定の説明責任が問われることとなる。そこでも、議論の共通言語としての体系化されたエビデンスの蓄積が重要である。
「科学技術イノベーション政策の科学」は、科学的方法論の開発とエビデンスの提示で終わらずに、得られた成果の政策形成の実践の場における活用が意図されなくてはならない。その成果は、既存政策の正当化のために用いられるのではなく、社会の課題解決に資する政策形成を求めるものである。
エビデンスを生み出す科学コミュニティと、政策形成に携わる政治・行政及び市民は、これらの目的を共有し、それぞれの責務を果たしながら協働していく必要があり、それぞれのステークホルダーが行動規範に基づいて行動する意思決定メカニズムを構築し、運用していくことが重要である。

[設計理念]
エビデンスに基づく政策形成のための「科学技術イノベーション政策の科学」構築では、以下を設計理念とする。
「政策形成メカニズム」と「科学技術イノベーション政策の科学」を車の両輪として共に進化させる。
政策形成における活用を目指し関係諸分野の連携による「科学技術イノベーション政策の科学」の体系化を目指す。
「科学技術イノベーション政策の科学」から得られる知見・成果を蓄積・集約・構造化し、社会の共有資産として活用する。
多様な主体によるエビデンスに基づく政策提言機能を強化する。
エビデンスに基づく複数の政策メニューを提示し、政策形成における社会との合意形成のための議論の場を提供することで、エビデンスに基づく政策形成を目指す。
エビデンスに基づく政策形成の基盤として、政策形成における政府と科学の適切な役割と責任(行動規範)を明確化する。
新たな政策形成と政策の科学の双方の担い手となる人材・コミュニティを戦略的に養成し、双方の人材の循環的な交流の場を形成する。

[推進戦略]
設計理念の遂行のため、以下を戦略として推進することを提案する。
1. 包括的推進に向けた体制
2. 目的に応じた研究プログラム
3. 研究及び政策形成のための統計・データ基盤
4. 人材・コミュニティの戦略的育成
[対象とする研究領域]
対象とすべき研究領域として以下を提案する。
テーマI: 戦略的な政策形成フレームワークの設計と実装
テーマII: 政策形成における社会との対話の設計と実装
テーマIII: 研究開発投資の社会経済的影響の測定と可視化
テーマIV: 科学技術イノベーションの推進システムの構築

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