2011年3月
(戦略プロポーザル)人間を含む情報構造に着目した情報科学技術研究の推進/CRDS-FY2010-SP-11
エグゼクティブサマリー

本戦略イニシアティブは、人間を含むシステムの情報構造に着目した新しい情報科学技術研究の推進を提案する。
社会活動のフィールドでは、多様な情報が生成・流通・蓄積・再生成されている。どのようなフィールドも情報なしでは動かない。フィールドを一つのシステムと捉えると、その中でシステムの構成要素の一つとしての人間は、周囲から情報を取り入れ、加工・処理し、新たな情報を発信する。複数の人間が関与するシステムにおいては、一人の人間から発信された情報は別の人間に受け渡され、そこで加工・処理されて新たな情報として発信される。このような一連の情報の流れ・関係性を一つの「構造」と捉え、ここではそれを「情報構造」と呼ぶこととする。
人間を含むシステムの情報構造を分析することにより、人間が構成要素として含まれることによって増大するシステムの不確実さ、複雑さをより予測、制御し易くし、人間の活動を最適に増幅するシステムを各応用分野で構築する情報科学技術研究を推進する。さらに将来的には、それらに共通する要素を抽出し体系化を目指す。これまでの人間を含むシステムに関する情報科学技術研究開発プロジェクトでは、人間とICTシステムとのインタフェースに関する個別技術開発を主に一定の成果をあげてきたが、ここでは人間を含むシステムの情報構造という観点での体系化を狙った情報科学技術研究の推進を提案する。
日本には、すぐれた電子部品や材料・ナノテク技術があり、組込みシステム技術、センサ技術といったユビキタス関連技術の蓄積もある。また、近年急速にクラウドコンピューティングの技術も進歩を遂げ、膨大なデータの処理も可能となっている。これらのセンサやクラウドの技術進歩に伴い、少なくとも5年前には想定できなかった研究手法やICTの応用が機能・性能のみならずコスト的にも十分に可能となってきた。例えば、人間および人間が関与する活動のフィールドにセンサを分布させ、それらから得られる膨大なストリームデータに埋没した暗黙知の形式知化が可能となってきた。これまで科学的に扱うことが困難であった人間の行動に関わる様々な現象などが、大量のデータの分析に裏打ちされ、科学として扱うことが可能となった。人間を含むシステムの情報構造に着目した情報科学技術研究を、今まさに始める時期がきたといえる。
人間を含むシステムの情報構造に着目した情報科学技術研究の進展により、人間の活動を増幅するICTと人間との役割分担、価値共創のベストミックスが図られ、社会の諸活動(行政、産業、教育、公共サービスなど)のICT導入による質の向上を効果的に図ることを可能とする基盤技術が創出される。こうした基盤技術に基づく情報通信システムの構築により、日本のあらゆる産業の産業競争力向上に大きく貢献する。また、日本が得意とする組込みシステムと人間との価値共創という観点からも、日本がリードできる研究領域および産業領域を創成できる可能性がある。更に今回の東日本大震災のような災害に対してロバストな情報通信システムの構築に貢献するとともに、増幅の負の側面である情報の信頼性や情報のアクセシビリティなど災害時に特に問題となる点に対する問題解決への貢献が期待できる。人間を含むシステムの情報構造に関する一連の研究を継続的に実施することで、一般化し理論として学術的に体系化することにより、他の応用分野へその理論を展開することが可能となる。

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