2011年3月
(戦略プロポーザル)全体観察による社会的期待の発見研究~持続性時代における課題解決型イノベーションのために~/CRDS-FY2010-SP-08
エグゼクティブサマリー

持続性時代にふさわしい科学技術イノベーションが求められている現在、科学と社会の間で認識を共有しながら社会に潜在する未来に対する期待を明らかにし、これを前提とした研究開発課題の設定を行えるようにすることが必要である。研究開発の課題設定や実施の前提として、社会からの期待を見定める段階にも科学的手段を導入することが、重要である。特に、長期的な研究開発の方向性を見定めるためには、社会と自然環境の状態変化の構造全体に隠れている未来に対する期待、つまり社会的期待の発見に挑戦する研究を推進していく必要がある。
「社会的期待の発見研究」とは、社会と自然環境の状態の変化についての研究分野を超えた広い視野からの観察に根ざし、科学的な根拠に基づいた社会的に共有される期待を明らかにしていく研究である。
社会的期待には、例えば「地球温暖化の抑制」のように、すでに多くの人々に共有されて社会の共通認識となり、持続性社会実現のための研究開発活動と行動につながっているものもある。ここで提言する社会的期待の発見研究が探求の対象とするのは、今のところ顕在しておらず社会と自然環境の状態変化の中に隠れており現状ではその全貌が明らかでない社会的期待である。

潜在する社会的期待の発見研究は、科学者による社会・自然環境の状態の観察結果に根ざし、それに基づく将来の予測を必要とする。社会や自然環境についての予測結果は公表され、社会との対話を通じて社会のなかでの認識が進化し、確実なものと認識されることが必要である。このようにして新たに発見された社会的期待は、持続性社会を目指した研究開発において研究課題を設定するための共通認識となる。
潜在的な社会的期待の発見研究のためには、科学分野を超えた俯瞰的視点による観察と、それに基づく予測が必要となる。しかし、潜在する社会的期待の存在様式はまだ知られておらず、社会的期待の発見研究のための方法論の開発や構築も、ここで提案する社会的期待の発見研究によって進められる必要がある。
社会的期待の発見研究が対象とする社会的期待は、個々人が持つ期待の寄せ集めではなく、社会、科学者の間の情報のやりとりの中で、俯瞰的観察の結果により検証されつつ進化するものである。このことから、社会的期待の発見研究を可能にするには、社会と自然環境をあわせた全体の観察を行う人文科学・社会科学系の研究者と、社会的期待を担った課題解決を目指す研究開発を実行する自然科学系研究者が、共通の問題意識を持ち、社会における行動者(産業、市民、行政などを含む)とも共同しながら、研究を進めることが必要である。

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