2011年3月
(戦略プロポーザル)問題解決を目指すイノベーション・エコシステムの枠組み/CRDS-FY2010-SP-06
エグゼクティブサマリー

本戦略提言は、問題解決を目指すイノベーション・エコシステムの枠組みを示し、その枠組みに科学者が参加するための基本的条件を提示する。
20 世紀以降、科学技術の知識を基としたイノベーションは社会の発展に大きく貢献してきた。しかし同時に、社会の持続可能性を脅かす様々な問題を引き起こしている。科学技術が進展し、産業の生産性と競争力が向上した反面、エネルギーや資源の大量消費に伴い、地球温暖化や環境汚染をはじめとする様々な問題が顕在化した。これらの問題は21世紀に入り、ますます深刻化している。また、今後新たに出現する問題にも適切に対処することが必要である。その解決のための手段として、社会の持続可能性を脅かす問題の解決を目指すイノベーション、すなわち「問題解決を目指すイノベーション」の持続的な創出が不可欠である。
イノベーションの創出に伴う複雑で不確実なプロセスに潜む阻害要因をイノベーションの機会に変換するためには、生態系(エコシステム)のように複雑なイノベーションを取り巻く全環境を良好な状態に整えなければならない。様々な要素間の創造的活動が恒常的に展開され、そのダイナミズムの中から効果的かつ効率的にイノベーションが創出される「問題解決を目指すイノベーション・エコシステム」が必要である。
持続可能性を脅かす問題の解決は科学技術に対する社会からの要請である。問題解決を目指すイノベーションは、社会と問題解決に向けた本格研究との循環によって創出される。この本格研究は、1.持続可能性に対する脅威の検出と解決すべき問題の設定、2.問題の解決策の設計、3.解決策の社会へ実装の3 つの研究から構成され、これらを一体として進める研究である。社会からの要請に対する回答として本格研究がその成果を出し、その結果から生まれた新たな要請を社会が本格研究に提示する、という社会と本格研究との循環が、持続可能な社会の実現に向けた持続的な進化を実現する。
問題解決を目指すイノベーション・エコシステムは地球規模で広がり、それを構成するプレーヤーには、科学者だけでなく、政府・行政機関、産業界、シンクタンク、NGO・NPO が含まれる。各プレーヤーはイノベーション創出に向けてそれぞれの役割を果たしており、各プレーヤー間、またプレーヤーと社会との間で様々な情報がやり取りされることによって、社会の持続可能性を脅かす問題の解決と持続可能な発展に寄与する、新たな価値が創造される。 科学者は問題解決を目指すイノベーション・エコシステムに積極的に参加し、社会と本格研究との循環を世界に展開しなければならない。そのため、本格研究を構成する3つの研究のすべてにおいて、国や分野の境界を越えて情報の共有と流通が求められる。さらに、本格研究を構成するこれら3つの研究を一体的に推進するためには、多様な人材、知識、資金が必要である。問題解決に必要なこれらの要素を必要な場所に集中させる方策として、施設や設備、規制や標準等の制度などの整備が有効な手段となりうる。
科学技術振興機構研究開発戦略センターでは、これまでイノベーションシステムに関する検討を続けてきており、その成果を基盤として、本戦略提言では、社会の持続可能性を脅かす問題の解決に向けて必要な新しいイノベーション・エコシステムを主導する方策を提案する。

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