2011年3月
(戦略プロポーザル)エネルギー高効率利用社会を支える相界面の科学/CRDS-FY2010-SP-05
エグゼクティブサマリー

本戦略プログラムでは、エネルギー利用の効率化を進める上で鍵となる「相界面の科学」の研究を、国として戦略的に推進することを提案する。

地球温暖化、資源枯渇などの地球規模の課題を克服し、豊かな持続性社会を構築するための今後のエネルギー技術の検討においては、再生・非再生エネルギーに関わらず、膨大な量を扱い得ることに加え、低コストであることの2 点が特に重要となる。革新性と量的貢献の両面から広くエネルギー問題を俯瞰的に捉えると、以下のように相界面の基礎学理と設計・製造・制御の技術基盤の重要性が浮かび上がる。

エネルギーを利用する様々な機器やシステムには、固体、液体、気体といった異なる状態や異なる物質が互いに接する境界(相界面)が必ず存在し、そこで生じる力学的、化学 的、あるいは電磁気学的な現象を利用するものが多い。エネルギー技術の理論的最高性能(限界性能)の実現を阻む損失は、すべて、エネルギーの変換、輸送、貯蔵プロセスにおける不可逆性が原因であるが、それらの多くはこの相界面で生じている。これらの損失を大幅に削減することが、省エネルギー、効率改善、新エネルギー利用のすべてにおいて本質的に重要である。
つまり、相界面におけるエネルギーキャリアの輸送と変換の素過程の全容を解明し、それらの知識を基に不可逆損失を最小化する設計を可能とすることによって、実システムでの機能や効率を限界性能に近づけることができる。例えば、高温で作動する固体酸化物形燃料電池の多孔質電極界面、ガスタービン翼の乱流伝熱界面、ガス化反応界面や排気触媒界面、希薄燃焼火炎界面、ガス分離膜界面など、様々な相界面の現象解明と高度な設計は、エネルギー利用効率向上や温暖化防止に大きな効果を有する。相界面現象の基礎学理や制御・最適化技術を深化させることによって、様々なエネルギー機器の飛躍的な損失削減、機能発現機構の創造が可能となる。結果として、基盤技術の性能向上と低コスト化が図られ、我が国が得意とするエネルギー関連技術をさらに振興する道が開かれる。

上記の目標を達成するためには、相界面現象のプロセスや素過程の解明、ならびに最適化や制御のための設計技術が必要となる。相界面は、ナノ、メソ、マクロのマルチスケール構造の各階層に存在する。ナノメートルでの現象解明や材料研究の成果を、実システムに活かすためには、1012 にも及ぶ幅広いスケールバンドを統合的に扱うことが必要である。このような幅広いスケールの現象を総合的に解析・設計するための計測技術、モデリングとシミュレーション技術、相界面構造を具体的に制御・最適化するための工学や数理科学を開拓することにより、先端的な基礎研究の成果を実際の機器やシステムの設計に反映することが可能となる。また、現象解明や材料開発を担う研究者、具体的な構造を実現する設計研究者の、ディシプリンを越えた連携と融合が欠かせない。材料系、化学系、機械系、電気系、システム系、さらには物理系、数理系の研究者が、エネルギー高効率利用を目的に結集し密接な連携を図ることによって、新たなブレークスルー達成の可能性が広がる。また、エネルギーに関わる基礎研究の成果は、最終的には量産プロセスに反映されなければ意味が無い。このため、実製品の要求機能や資源的あるいは環境的な制約条件を、早い段階から基礎研究にフィードバックするプロセスが欠かせない。産業界とアカデミアの研究者ネットワークを構築するなど、社会ニーズを基礎研究の課題設定に適宜フィードバックする体制や仕組み作りも重要となる。 なお、相界面現象は、様々なエネルギーキャリアが、異なる相(気- 液- 固)の間で輸送・変換されるプロセスであり、人類のあらゆる生産・消費活動に関わっている。本戦略プログラムによる成果はエネルギー利用に限らず、広く他分野にも転用できる共通基盤的なものであり、その波及効果は極めて大きいといえる。

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