2010年9月
(戦略プロポーザル)ヒト多細胞体の構築・移植技術の確立と実用化/CRDS-FY2010-SP-03
エグゼクティブサマリー

「ヒト多細胞体の構築・移植技術の確立と実用化」とは、生命を構成する基本単位である細胞の動態をシステムとして理解し操作するという、新しいライフサイエンスの研究潮流を活用し、その成果と、従来から推進されている再生医療研究、移植免疫研究、人工臓器技術開発などとの融合的展開を図ることによって、特定の生体機能を担う臓器・器官の一部または全体を再現する、ヒトの体内に移植、生着が可能な多細胞体を人工的に構築し、提供を実現することで革新的な医療技術の実用化を目指すものである。

本提案によって推進される研究の成果と技術開発により、代替治療法がなく喫緊に臓器移植が必要な疾患、障害を抱える人々へ安全でより生体機能に近い臓器・器官を提供できるようになるとともに、高額な医療費のかかる対症療法に代わって機能代償や臓器移植技術を適用できる疾患範囲を拡大し、脳死患者や健康な提供者から臓器提供を受ける際の倫理的問題、技術的課題を克服した移植医療技術を広く人々に提供できるようになる。これにより、我が国の健康長寿の礎を創出し、ライフサイエンス産業の新興を図り、国際的にも問題を引き起こしている臓器移植ビジネスをとりまく倫理的、法的、社会的問題を当該技術の普及によって解決していく。

本プロポーザルにおいて提案する研究開発領域は、多細胞体構築技術の要素技術・基盤技術に資する研究開発から生まれた医療技術を実用段階へと進展させ、さらにその産業化を達成する段階まで到達させるものとして、次の3つの研究開発課題からなる。

○ 特定の生体機能を担う器官・臓器の一部または全体を再現する多細胞体の構築技術開発
○ 構築技術が確立された多細胞体を効率的に作製する製造工程確立に有用な技術開発
○ 生体に移植された多細胞体の生着率の向上、安全性の評価などに有用な指標の探索ならびに計測技術の開発

研究推進体制としては、当該領域に関連する多様な要素技術・基盤技術の研究開発を個々の研究者、研究グループが独自に行いつつその成果を網羅的に共有し、さらには既存技術開発の適切な融合や活用も可能な体制が求められる。また、個別の要素技術開発研究グループが複数集まって、クリニカル・サイエンス主導の目的達成型研究開発を、実験施設と医療施設が併設されている拠点機関で推進することが望ましい。また個別の要素技術開発の成果を臨床研究、トランスレーショナル・リサーチなどを経て、さらに社会実装へと繋げていくクリニカル・デベロップメントを適切に進めるべく、ベンチャー企業を含む産業界との連携や規制当局との交渉機能を持つ組織を研究推進体制の中に組み込んでおくことも重要である。

本研究開発戦略では、特定の生体機能を担う細胞の集合体を目的に沿って3 次元に構築する技術開発にかかる期間と生体内においてそれらの構築された器官が安全で恒久的に機能するための安全性評価、移植に伴う免疫制御技術の確立、前臨床試験に計10 年ほどかかることを想定し、多細胞体を効率的に作製するための設備の確立や治験を含めた全研究期間を15 年間とする。

PDFダウンロード

関連報告書