2010年3月
(戦略プロポーザル)情報システムに対する要求仕様の変化に対応するソフトウェア技術/CRDS-FY2009-SP-12
エグゼクティブサマリー

情報システムを構築するためのソフトウェア技術に関する研究開発は、古くから実施され、生産性向上や信頼性向上を目的としたソフトウェア開発支援ツールや開発の方法論が世に出されてきた。その中で、一定の成果を収めつつ、成熟期にさしかかったかに見えるソフトウェア技術であるが、オープンネットワークを基盤とする情報システムは、1.不特定の利用者が存在し、その振る舞いや要求の変化を捉えることは困難といった課題、さらに、2.情報システム自身の経年劣化や、企業合併などによる情報システムの統合といった社会環境の変化なども考慮しなければならないといった課題がある。これらの情報システムに対する要求仕様の変化にどうソフトウェア技術として対応するかという課題は、もはや国内ベンダー各社での地道な取り組みでは、解決できなくなってきており、大手ベンダー各社は、DSF(Dependable Software Forum)を設立し、大規模・複雑化するソフトウェアの課題に取り組み始めた。しかし、課題の重要性を考えれば、産業界だけでなく大学の研究者も含めて、日本全体の英知を結集して取り組むべきである。学側ではこれまで基礎研究として、様々な方法論やツール開発が行われてきたが、産側での適用にいたる成果としては十分とは言えない状況であった。学側がこれまで取り組んできた単独の方法論やツールだけで情報システムのライフサイクル全体(設計、開発、運用、保守)をカバーすることはできず、いくつかの研究成果を統合する応用研究が非常に重要となってくる。基礎研究とそれらの成果を統合する応用研究を産学連携により強力に推し進め、日本発のツールおよび方法論を世に問い、様々な産業のインフラとなる情報システムの安定的運用を目指さなければならない。
本戦略プログラムでは、基礎研究の具体的研究課題の例を提案するとともに、基礎研究の成果を統合する応用研究をDSFなどの動きと呼応し産学連携により強力に推し進めることを提案する。
 情報システムの設計、開発、運用、保守というライフサイクルにおいて、従来の研究は、設計および開発の部分に焦点があてられ、ソフトウェア工学としてソフトウェアの生産性向上、高信頼化に関する研究が主として行われてきた。しかし、今後は運用時における要求の変化をはじめとする情報システムを取り巻く様々な環境の変化に対応し、持続的な情報システムを実現するためのソフトウェア技術が求められる。設計だけでなく、運用、保守までも含むライフサイクル全体に対して、全体的アプローチでの研究を新たに推し進めなければならない。
具体的な研究課題の例として、ライフサイクル全体をカバーすることを目的に、変化する要求の抽出・分析、モデルにおける変化の記述、プログラム検査、モニタリングといった基礎研究課題を提案する。さらに、こうした基礎研究の成果を現場で適用するために、いくつかの研究成果を統合する応用研究の推進に関する提案をおこなう。
これにより日本発の情報システム構築の方法論やツール群を世界に向けて発信し、各種産業のインフラとなる情報システムが様々な変化に対応し持続的・安定的に運用される状況を実現し、日本の産業競争力優位を実現する。また、実施される研究開発プロジェクトを通じてシステム思考ができる人材の育成を図る。

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