2010年3月
(戦略プロポーザル)生命・医学・医療・健康をつなぐ情報を循環させる技術と基盤の構築と活用 ~トランスレーショナル・ヘルスインフォマティクス・ベースの展開~/CRDS-FY2009-SP-08
エグゼクティブサマリー

本戦略プログラムは、医学・医療における「知の循環」の確立に必要となる情報を循環させる技術と基盤(ここではTHIB:トランスレーショナル・ヘルスインフォマティクス・ベースと名づけた)の構築と活用を提案するものである。

THIBを構築することで、ライフサイエンス研究の成果と個々人の医療情報・診療データの相互利用が可能となり、基礎医学の進展や医療の高度化(個別化医療の実現など)に加えて、疫学研究の進展、医療プロセスの高品質化、さらには経済面からの医療の効率化といった効果が期待できる。

優れたライフサイエンスの成果を活用し、新しい治療法や医薬品・医療機器等として社会に還元していくための「健康研究(Health Research)」(橋渡し研究・臨床研究)の必要性から、わが国にも2008年より内閣府の下に健康研究推進会議が設立されている。その健康研究推進会議より提案された「健康研究推進戦略」の中では、基礎研究により生命現象と疾病のメカニズムを解明し、それを診断や治療法に転換して医療を実践し、その医療効果を評価して新たな課題を設定し、それを再び基礎研究につなげていくという、医学・医療における知の循環の確立を目指すべきとされている。

こうした状況にかんがみ、我が国のライフサイエンス研究の成果が円滑に医療に活用されるために、情報基盤の整備という観点から、ライフサイエンス分野のデータベースを十分に活用できる基盤を作り、ライフサイエンス研究の効率や質を向上させることを目的に、いくつかのプロジェクトが推進されてきた。しかしながら、患者の個人データを含む診療データを扱うためのセキュリティ、特にプライバシー保護の課題、診療データにおける病名を始めとする医療用語の相違によるデータ収集の困難さといった課題があり、医療側のデータ整備が十分でなく、ライフサイエンス研究と医療側の研究を両輪として発展させていく余地は十分残されている。今後これらを両輪として発展させていくためには、医療側データの整備を進めるための医療データの標準化や、プライバシー保護技術、認証・アクセス制御技術、さらに各種データベースを連携させるための技術を開発する必要がある。

ライフサイエンスの最先端の知と医療を結びつけるための情報基盤、さらには臨床データを有効に利用するための情報基盤、診療データ、健康診断データ、疫学調査データなどの活用も視野にいれた情報基盤を総合的にTHIBとして構築する。THIBの構築・活用に当たっては、インフォマティクスに関連する先進的研究への投資だけでなく、標準化活動や共用ツールなどのインフラ構築部分への投資と恒久的運用が必要である。

さらに、THIB構築の具体的推進方法としては、当初から統一的大規模システム開発を目指すのではなく、拠点を決めスモールプロジェクトでスタートさせ、インフラ構築を進めつつコミュニティを拡げていくこととし、既存システムの連携(フェデレーション)に重点を置いたシステム構築を目指す。

(注)本提案は、拠点でのインフラ構築整備に関わる資金と、個別研究課題を公募で実施する競争的資金を含む。

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