2010年3月
(戦略プロポーザル)「ナノテクノロジー」グランドデザイン ~グローバル課題解決の鍵となる技術領域~/CRDS-FY2009-SP-07
エグゼクティブサマリー

「ナノテクノロジー」グランドデザインは、グローバル課題に対応する科学技術の主要な分野の一つとしてナノテクノロジー(以下ナノテク)に焦点を絞り、(1)その学術的・技術的な特徴と科学技術全体の中での位置づけの明確化、(2)ナノテクに関する内外の国家戦略の分析および今後の日本の公的投資に対する提言を含む諸課題の指摘、(3)グローバル課題解決に向けたナノテク技術戦略の具体的提案、を包括的に論じている。その主要な結論を以下に略記する。

(1)「ナノテク」技術領域の進化プロセスは、1.ナノの先鋭化(極限化)、2.ナノの複合化(融合化)、3.ナノの組織化(システム化)という3つのステップで理解することができる。これらの階層的、重層的な進化によって、専門細分化された現在の学術・技術領域は横断的に統合・再構成され、グローバル課題に対応し得る「機能設計学」が誕生する。これはナノテクがドライブする工学の復権であり、「機能設計学」こそ今後の課題解決とイノベーション創出への強力な武器である。

(2) 日本は1980年代からナノテクへの国家投資を継続しており、現在のところ学術・技術とも、国際的優位を保っている。しかしながら、最近、国家投資額において米国、EUだけでなく中国、韓国にも追い抜かれ(2007年/購買力平価比較)、優位性は年毎に失われており、今後の投資を躊躇すれば将来的に国益を損なう恐れがある。数十年にわたって蓄積されてきた人材ネットワークや学術ポテンシャルなどの有形・無形の資産は、遅滞無く、課題解決の基盤プラットフォームとして第4期科学技術基本計画の新戦略構築に引き継がれるべきである。国際感覚と俯瞰視野を持つ人材の育成・教育については、国だけでなく、アカデミアサイドの自主改善努力が強く期待される。

(3) 第2期、第3期の「分野推進型」戦略は、第4期以降、「課題解決型」戦略へと転換されつつある。2期10年、約40兆円を投入した科学技術政策全般の論理的かつ定量的な評価が不可欠であり、政策転換のエビデンスが必要である。一方、「分野推進型」であれ、「課題解決型」であれ、ナノテクへの公的資金投入の費用対効果を上げる方法は、異分野間や基礎・応用間のコミュニケーションを高める運営と府省連携促進の実施である。その意味で政策課題群と技術分野群とによって縦横(タテヨコ)のマトリックスを構成し、一体的に運営していける仕組みの構築が不可欠である。ナノテク・材料分野の重要課題は、環境・エネルギー対応(グリーン・イノベーション対応)の「グリーンナノテク」、健康・医療対応(ライフ・イノベーション対応)の「ナノバイオ」、基幹産業であるエレクトロニクスの国際競争力維持のための「ナノエレクトロニクス」の3つの技術分野で整理される。その際、第3期における「戦略重点科学技術」のような優先重点項目の遂行にあたっては、米国のPCA(Program Component Area)や韓国、台湾の例に見るように、項目別の中長期の大まかな予算配分比率と数値目標を決めておくべきである。共用施設ネットワーク構築や社会受容対策については、特にこのような配慮が必要である。研究拠点、教育・人材育成、産官学連携、府省連携、ファンディング制度、社会受容、国際協調・標準化・知財戦略、それぞれについて具体的に提言している。

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