2010年3月
(戦略プロポーザル)空間空隙制御材料の設計利用技術 ~異分野融合による持続可能社会への貢献~/CRDS-FY2009-SP-05
エグゼクティブサマリー

本戦略プログラムの「空間空隙制御材料の設計利用技術」とは、物質/材料中の微細な空間空隙の形状・寸法・次元および配列などの構造を設計・制御して革新的物質機能を発現させるための、科学的方法論と実現技術の体系であり、人類が直面する地球的規模の課題(グローバル課題)の解決に資する新機能材料や新機能素子の実現を可能とする基盤的技術と位置づけられる。本戦略プログラムは、空間空隙制御材料に関する先鋭的シーズ研究の開発課題だけでなく、それらを社会的課題解決へ向けた応用研究に自然につなぐことを可能とする課題設定方法や、研究体制、ファンディングシステムなどの研究推進方法を提言する。これらは、新しい横断的学術分野の形成をも視野に据えるものである。

本戦略プログラムの「空間空隙」とは、物質を構成する元素とその結合によって構成される元素ネットワーク・トポロジーにおける「すき間」を意味する概念であり、あらゆる寸法レベルで物質が発現する機能を理解し、設計・制御する際の一つの鍵概念と位置づけられる。例えば、ナノレベルの空間空隙は物理的・化学的相互作用を規定することによって機能発現の起源となり、また、マクロレベルの空間空隙は、階層組織間の歪の蓄積を緩衝し、マクロな複合的全体構造を安定化する。
本戦略プログラムの研究開発課題は、大きく次の3課題で構成される。

A:空間空隙制御材料の設計と合成: 機能先鋭化
B:空間空隙インプリメンテーション技術: 応用促進
C:共通基盤技術: 観察・解析技術、原理解明

課題Aは、空間空隙制御材料の新構造新機能の設計と合成に関するシーズ先鋭化研究である。一方、本戦略プログラムで最も特徴的な提言として、課題Bのインプリメンテーション技術がある。たとえば、課題Aで要素技術を研究する際に、将来社会ニーズに応える技術へ適合させていくために必要とされる可能性がある技術群(インプリメンテーション技術)を想定し、それらに必要とされる科学的原理を抽出した上、それらの科学的原理の1つ以上を、あらかじめ要素技術の研究に組み込むか、または、科学的原理との関連性を明示した要素技術の研究提案を奨励する。本戦略プログラムで想定するインプリメンテーション技術の例としては、ナノ構造物質のマクロ化(機能規模拡大)、高強度化、高速合成、低コスト化などの諸技術が挙げられるが、想定される社会ニーズに応じてインプリメンテーション技術自体の新提案も大いに奨励される。課題Cは、ナノメートルスケールの空間空隙における反応や輸送などの諸現象を観察・解析する技術である。各種顕微鏡、回折分析技術などの観測・解析技術および計算化学に基づく解析技術の進展は本戦略プログラムに欠かすことができない。

これら研究開発の実施にあたっては、異分野間の交流による融合の促進やシナジー効果が不可欠である。異なる学問分野間の交流、融合が必要なことはもちろんであるが、それに加えて、往々にして学術志向の基礎研究者と実用化志向の応用研究者の間、あるいはデバイス・システム・プラントなどの各技術者の間などでは志向性が異なり、時には共通言語すら異なるため、グローバル課題の解決へ向けた協調的相互交流に支障をきたす実状がある。そこで、このような溝を有する異分野コミュニティー間で、単なる技術知識共有という視点を超えて問題意識を共有し、イノベーションを誘発するための推進方法として、要素技術探索・先鋭化を主眼とする創造的深堀型基礎研究と、分野横断的に実用技術開発を推進する水平展開型応用研究との連携促進メカニズムを内蔵するようなファンディングシステムや、課題解決型異分野融合連携ネットワーク型拠点の形成などの仕組みも、本戦略プログラムの一部として提言する。

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