2009年7月
(戦略プロポーザル)ナノエレクトロニクス基盤技術の創成 -微細化、集積化、低消費電力化の限界突破を目指して-/CRDS-FY2009-SP-01
エグゼクティブサマリー

本戦略プログラムは、現在のエレクトロニクスを支えているCMOS技術の限界を超える新しい概念や技術に立脚する、将来産業の基盤の確立に向けたナノエレクトロニクスのシーズ研究開発の戦略的推進に関する提言である。
現在、我が国の産業界では新基幹産業創出のためのナノエレクトロニクス開発のシナリオの議論が始まっているが、その構想とも連携しながら、大学・独法研究機関が主体となって技術シーズを探索する研究開発の戦略を提言する。

情報通信機器が処理する情報量は年々指数関数的に増大し続けており、エレクトロニクスデバイスの微細化、集積化は今後も必須の流れとなっている。しかし、微細化の物理限界や、微細化による特性のばらつきの増大、集積化に伴う素子の消費電力の増大が、将来、大きな問題となってくる。この限界を突破するには、進展著しいナノサイエンス、ナノテクノロジーを駆使し、現在のCMOSを超える新しい動作原理に基づくデバイスの実現を目指した研究開発、およびそれに必要な新材料の探索を行うことが必須である。海外では既にこの分野に多額の研究投資が行われており、我が国も国主導で今後研究開発を加速する必要がある。

具体的な研究開発課題は以下の通りである。
1) 高速化・大容量化・低消費電力化・高信頼化のための新原理・新構造論理素子/記憶素子の動作検証とデバイス技術構築
2) ナノエレクトロニクスデバイスのための新材料探索とデバイス適用可能性の実証

上記1)は、電荷を論理変数とした現在の論理素子に代わる新状態変数を用いたデバイス、および超高速、超大容量、超低消費電力化のための新原理記憶素子の研究開発に関するものであり、2)はこれらの新原理、新構造の論理素子、記憶素子実現のために必要な新材料の研究開発に関するものである。新原理デバイスにおける新状態変数の例としてはスピン、相状態、分極、分子配置などがあり、いずれも電荷を用いないことによって、エネルギー散逸がなく、静電容量による遅延もなくなるので、このような新状態変数を利用したデバイスが実現すれば、超低消費電力化、超高速化への可能性が拓ける。これらは現状ではまだ実現されておらず、一部は概念の実証すらできていない。したがって難易度は極めて高いが、実現すればインパクトは非常に大きい。

本提案の研究開発の効率的な推進のためには、研究開発拠点の設置、産学独の連携研究、国際化方策、さらには、人材育成をも研究開発成果とみなす観点が必要である。具体的には以下の推進方法を提案する。
(1) 研究開発拠点: ナノエレクトロニクス基盤技術の研究開発では、高度に管理される設備装置群が必要である。欧米における幾つかのグローバル研究拠点を参考に、我が国の状況に適合した研究開発拠点を設置し、多くの研究者が拠点に集結して研究開発の推進を図ることが必要と考えられる。
(2) 産学独連携: 研究開発成果を原理的提案レベルにとどめることなく、効率良く実社会で使われるようにするには、産学独連携関係が築かれることが望ましい。産学独が結集して幅広いシーズについて研究開発を進めながら、進捗段階に応じて産学独の参画の程度などを変えていくような体制をも検討すべきである。
(3) 国際化: 本提案のような将来に向けたシーズ探索型研究開発では、国外からも世界トップレベルの研究者や意欲的な学生が参画できるような推進体制が必須である。例えば、研究者の子弟のためのインターナショナルスクールのように、従来我が国で欠けていた社会インフラ面での整備が特に必要である。
(4) 人材育成: 長期的観点からみた我が国のナノエレクトロニクス分野の最大の問題は、将来を担う人材の不足である。本提案のプログラムでは、単に技術開発成果のみを求めるのでなく、人材の育成も重要な成果であるといった観点で研究開発を推進すべきである。

エレクトロニクスデバイスにおける微細化、集積化、低消費電力化の限界の突破/回避は現状技術の延長では解決困難な課題であり、新原理、新構造、新材料の探索と、それらを用いたデバイスの研究開発に対する長期にわたる取り組みが必要である。上記提案の実現に向けて、関係各省の現行プログラムあるいは計画中のプロジェクトとも融合させて、国としての投資効率を上げる運営が不可欠である。

PDFダウンロード

関連報告書