2009年3月
(戦略プロポーザル)ユビキタス情報社会を支える無線通信基盤技術の統合型研究開発/CRDS-FY2008-SP-13
エグゼクティブサマリー

この戦略プログラムは、近未来に到来が予想されているユビキタス情報社会においてキー技術の一つとなる無線通信の基盤技術に関して、通信方式から回路・デバイス・材料まで一貫した思想で研究開発を行うことを提案する。
今後、身の回りにある多様なものの中にコンピュータチップやセンサなどが組み込まれ、それらがネットワークで結ばれることによって、利便性・安全性・経済性が提供される「ユビキタス情報社会」の到来が予想されている。そこで用いられるネットワークは、場所の制約を受けないという利便性の観点から無線通信ネットワークであることが必須である。したがって、近未来の社会基盤を支える核となる技術としての無線通信技術の重要性は、今後格段に高まるものと予想される。
我が国の無線通信技術は、アンテナ伝搬、マイクロ波・ミリ波などのハードウェア技術、ネットワーク符号化などの分野は伝統的に強く、最近では複数の無線通信ノードをつないだ協調無線通信方式などの新しい研究領域で世界をリードするなど、研究者層も技術者層も世界のトップレベルにある。また材料・デバイス技術においても水晶デバイスをはじめ世界をリードしている分野が数多くある。しかしながら、従来の研究開発は、分野ごとの研究者によって独立して行われる傾向があり、そのために我が国全体としての力が十分に結集されなかったきらいがあった。米国や欧州では、未使用の周波数を動的に利用するコグニティブ無線技術や、消費電力を考慮した無線センサネットワーク、移動端末デバイスを用いた新世代のサービスやアプリケーションなどの研究が始まっている。この戦略プログラムでは、方式から回路・デバイス・材料まで一貫した思想で研究開発をおこなうことにより、この分野の学術的・産業技術的なレベルアップを図り、社会基盤の構築、産業競争力強化、さらには人材育成に挑戦することを提案する。
無線通信技術の基礎には、変調、符号化、暗号化、認証、多元接続などの要素技術があり、これらには数学が深く関わっている。したがって、無線通信技術の研究者と数学者が共同で方式の研究を行うことを提案する。これによって従来の方式の単なる延長ではない新たなアイデアが生まれることが期待できる。特に無線通信において、利用できる電波帯域は有限であり、それを最大限に有効に利用しなければならない。この観点からは、未利用周波数帯の有効利用技術、微小セルなど空間多重技術、割り当て済み周波数の動的利用技術などが重要であり、これらの新しい通信方式に関する研究開発課題に取り組む。
また、新たな方式とともに、それを実現する回路・デバイス、さらには材料の研究も重要である。より具体的には、高周波回路、デジタル/アナログ混載回路、アンテナ、高周波材料など多くの分野における研究開発課題がある。これらはハードウェアだけでなくソフトウェアの要素も大きい。これらについても方式の研究者との連携を取り、実現しようとするシステムを具体的に想定して回路・デバイス・材料に対する要求仕様を明らかにし、それを満たしうるものを研究開発する。逆にデバイス・材料レベルから回路レベルへ、さらに方式レベルへと、技術の現状と進展の見通しをフィードバックすることによって、全体として効率の良い、かつ調和の取れた研究開発を可能にする。

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