2009年3月
(戦略プロポーザル)炎症の慢性化機構の解明と制御/CRDS-FY2008-SP-08
エグゼクティブサマリー

炎症に着眼して、通常は消散に至る急性炎症が慢性化へ機転する機構と、さらには疾患発症に至る機構を解明、制御し、高齢化社会で求められる先制医療の礎を創出する研究を提案する。

本戦略プログラムは、生体が有害な刺激を受けた際に発動される炎症に着眼し、消散すべき炎症反応が未知の要因によって慢性化し、新たな病因の発生機構を解明する研究と、慢性炎症を消散させる制御機構の研究を合わせて推進し、近年、大きな課題となっている炎症関連疾患に対する先制医療基盤を構築することを目的とする。研究対象は、分子から細胞の階層に留まらず、組織・器官の階層に重点を置く。

炎症は、古から、熱、痛みを伴う赤みや腫れと広く理解され、感染や組織傷害に対して、生体が発動する生体修復機構とされてきた。しかし、近年、この炎症が消散にいたらず、制御できない状態となって生体を侵襲し、神経・筋疾患、消化器疾患、精神疾患、代謝性疾患、骨・軟骨疾患、循環器疾患、感覚器疾患、自己免疫疾患、がんなどの数々の疾患の要因となることが示唆されている。しかし、炎症がどのようにして慢性化し、疾患を引き起こすのか、ひいてはどのような生理的意義を持つのかは明らかとなっていない。一方、従来から抗炎症剤があるが、長期の使用によって副作用をもたらすものがある。高齢化が急速に進行しているわが国では、数多くの炎症関連疾患が問題となっており、これらに共通して発症契機をもたらすとされる炎症についての深い洞察と制御が喫緊となっている。本研究は、生体システムにおける炎症の理解と制御の研究を機軸とするものであり、以下の先制医療の基盤を生む。

1.慢性化への分岐点を検知する医療開発を進展させる、病因発生と発症の因果関係を分子・細胞、ひいては組織・器官レベルにおいて可視化する基盤技術
2.生体システムにおける炎症機構の位置づけに基づく、副作用を生まずに炎症を消散させる治療基盤

上記の基盤技術により疾患発症に先駆けて医療的処置を行い、悪化を抑制する医療として発展した場合、炎症関連疾患に対するワクチン、発症前治療・バイオマーカーの創出が期待される。なお、病巣における炎症制御の観点から、本研究は、再生医療開発にも貢献する。

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