2009年3月
(戦略プロポーザル)複合的食品機能の定量解析研究~農・工・医学融合による健康・安全へ向けた先進食品科学~/CRDS-FY2008-SP-04
エグゼクティブサマリー

「複合的食品機能の定量解析研究」とは、個体、細胞やヒト消化管モデル等を活用し、食品の特徴である微弱で遅効的且つ複合・多様的な機能を定量的に解析し、解明する研究開発である。ここでいう食品の機能とは、複合的な成分から成る食品による健康維持・増進、疾病予防効果などに加え、食品の安全性に関係する人体に危害を及ぼす機能(毒性:食品が本来持っている成分と農薬などの外来的な成分)も含んでいる。

本戦略プログラムは、食品が人体に及ぼす「機能」に着目し、食品による健康維持・疾病予防、さらには食品の安全性確保の実現に資する研究開発を提案している。機能の定量的解明は、構成成分が単一である「医薬品」に関してはかなり実現してきているが、元々複雑且つ多様な成分で構成されている食品については、全くといっていいほど実現されていない。近年、糖尿病や高血圧症など生活習慣病の罹患患者が増加の一途を辿っており、このような背景から疾病を予防するために、日頃から摂取している食品を活用する「医食同源」の概念が浸透しつつある。これは「医薬品による治療」から「食品による予防」という予防医療の実現に向けた新しい流れと考えられる。食品により健康を維持し、疾病の予防を実現するためには、その食品が有する機能を明らかにし、個人の体質にあった適量の食品を摂取する必要があるが、食品に含まれる多様な成分が生体内で複雑に反応し、効果が微弱的且つ遅効的に現れることから、機能の解析は困難とされてきた。そこで本提案では、食品の消化・吸収、人体への作用を明らかにするために、(1)個体、(2)組織・器官、(3)細胞という生体の3つの階層おける複合的食品機能評価系の開発を通じて、これまで未解明であった食品機能の定量解析に挑むことを提案している。各階層の主要な研究開発課題は以下の通りである。
(1) 生体調節機能マーカーによる機能評価と新たな安全評価法の開発
(2) 人工消化管モデルの構築による食品成分の複合的動態解析と機能評価
(3) 複合的食品成分の体内動態把握とターゲット因子の同定および作用機構の解明
食品の機能は複雑であるため、各階層での評価結果が一致するとは必ずしも限らない。そこで解析結果を統合し、総合的に判断する視点が今後の食品研究では重要である。

以上のような研究開発を中長期的視野で実用化レベルに進展させるためには、食品機能を研究する農学、評価技術を開発する工学、そして、人体への効果・影響を評価する医学など、異分野の研究者が連携・融合して取り組むとともに、実際に機能性食品等を開発している産業界との協力体制を構築することが肝要である。

本提案は、日本における食品の科学・工学の強みを生かした基盤研究課題への投資戦略であり、社会・経済的波及効果としては、(1)食品による健康維持・予防医療の実現及び食品の科学的安全性の担保、(2)新たな機能性食品の開発による食品市場の拡大、(3)食品機能を複合的・定量的に評価する日本発の科学・技術の進展による、栄養学分野の飛躍的な進歩などが期待される。

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