2008年3月
(戦略プロポーザル)ヒューマンバイオロジーに基づく医薬品評価技術の革新 /CRDS-FY2007-SP-16
エグゼクティブサマリー

現在の創薬開発においては、その成功確率の低下や研究開発費の巨大化など、深刻な問題が生じている。また、近年のバイオ医薬品や分子標的薬に代表される新しい医薬品においては、その安全性や有効性を評価するための技術が確立しておらず、これが臨床開発の長期化の原因の一つとなっている。また、わが国にはiPS細胞作成技術や光工学を利用した計測技術など、医薬品評価に応用可能な基礎技術が豊富にあるにもかかわらず、それらの多くは医薬品評価のための技術として十分に活用されていない。さらに前臨床から臨床までの医薬品開発段階における安全性・有効性評価データの統合化も行われておらず、多くの技術は医薬品開発全体の迅速化にも結びついていない。
以上の状況を踏まえ、医薬品の安全性と有効性を高精度に予測・実証するための統合的な評価技術として、「ヒューマンバイオロジーに基づく医薬品評価技術」確立のための研究開発推進を提言する。「ヒューマンバイオロジーに基づく医薬品評価技術」とは、ヒトゲノム解読を契機とした昨今のライフサイエンスの進展を基盤とした、医薬品の安全性と有効性を高精度に予測・実証するための統合的な評価技術である。そこでは、ヒト生物材料とヒト生体情報を標準化し、有機的に統合することで、医薬品開発における前臨床から臨床までの段階を統合化した評価体系を開発する。さらに敷衍すれば、以下の要素技術を対象とする研究開発を行なう。
1.ヒト生体を模倣した細胞・臓器材料およびモデル動物の開発
2.分子イメージングなどによる客観的な臨床評価手法の開発
3.数理モデルなどによる評価実験データを連結・統合する技術の開発
これらの研究開発の推進は、医薬品開発という出口を明確に意識させるためバーチャルな研究開発プラットフォームを設置し、PO等による強力なリーダーシップの下で実施することが望ましい。そして、低分子化合物の毒性を予測するための統合的な評価実験系、抗体医薬開発における免疫療法評価系の確立、核酸医薬における体内安全性の評価技術などの具体的目標を掲げ、関連する評価技術群が統合的に推進されるべきである。
本研究開発により、げっ歯類等のモデル動物を用いた従来の生体内反応評価では困難であった種差に起因する薬剤反応の違いを除外することが可能になる。また安全性・有効性評価データを連結するための技術を確立することで、臨床段階からヒト材料に基づいた有効性、安全性を正確に評価するためのシステムを構築することが可能になる。さらに、製薬企業、医薬品評価試験受託企業や承認審査等を行う機関等が最新技術を共有しきれていない現状に対して、医薬品の迅速な審査・承認を実現するためのレギュラトリーサイエンスの発展にも大きく寄与することができる。

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