2008年3月
(戦略プロポーザル)低分子量化合物による細胞機能制御技術/CRDS-FY2007-SP-13
エグゼクティブサマリー

ゲノムプロジェクトの進捗により、ヒトゲノムの遺伝子配列から想定される10万種以上のタンパク質の構造や機能に関する解析が世界規模で精力的に進められている。また、細胞の機能に重要な役割を担うものや結晶化が容易なものを中心としてタンパク質間の相互作用に基づく細胞機能の発現システムが明らかとなってきた。
このような流れの中で、天然化合物を活用することで、細胞機能の制御を担うタンパク質機能をゲノムワイドに解析し、生命機能の包括的な理解とその制御を目的とした、いわゆるケミカルゲノミクスに期待が持たれている。
そこで、天然物の骨格を母体とし、タンパク質に作用する低分子量の化合物を合成することにより細胞機能の発現制御を行う技術、すなわち「低分子量化合物による細胞機能制御技術」を確立する研究戦略を提案する。
機能の制御を行うためには、制御標的となるタンパク質を同定し、同定されたタンパク質に作用させる最適な化合物を合成する必要があるが、これらの技術が未熟であるため、現在ほとんどの細胞機能が制御不能となっている。そこで、以下の3つの技術開発を中核とした研究開発を展開することにより種々の細胞機能の制御技術の達成を目指す。
1.生理活性を有する化合物の探索技術
2.生理活性化合物が標的とするタンパク質の同定技術
3.生理活性化合物の最適化技術
本研究開発の推進にあたり敢えて天然化合物を選択する根拠は、本来的に天然物は多種多様に存在し、しかも生理活性を有するものが少なくなく、加えて我が国が絶対保有数、合成技術等において他国を圧倒している点が挙げられる。
また、タンパク質を直接標的とするのではなく、細胞の表現型の解析に着目する理由として、細胞の形態変化等を可視化または計測する技術に強みを持ち、ユニークなアッセイ系の開発が多く行われていることに加え、生物学の分野において、化合物により制御が可能な多くの重要な細胞系が構築されていることに基礎付けられている。
具体的には、iPS 細胞や免疫細胞に代表される多くの細胞研究が既に世界のイニシアティブブを獲得しており、これらの細胞機能を制御することにより従来にない新しい医療技術が創出されることが期待できる。
以上に加え、文部科学省などで化合物ライブラリーの整備が進められ、ケミカルバイオロジー研究会の発足により化学と生物学の融合研究が醸成されつつあることなど、最近の推進基盤の充実も本プログラムを提案する根拠となっている。
本研究領域の推進による直接的な成果は、タンパク質を中心とした細胞の機能発現メカニズムの理解、タンパク質の機能を調節する化合物、さらにはスクリーニング等に関する新規技術等の創出にあり、下記の科学技術上、社会経済上の多くの効果が期待される。
1.これまで、遺伝子の機能的カスケードとして捉えられてきた細胞の機能発現を、具体的なタンパク質の面から明らかにすることにより、生命科学研究が飛躍的に進展する。
2.細胞機能制御を担うタンパク質に関する知見や、細胞機能を制御することを実証された化合物、またそれらを獲得する技術等が、企業における創薬開発を加速する。
以上により国が本領域に投資する意義は極めて大きい。

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