2008年3月
(戦略プロポーザル)生体ミクロコスモスによる健康評価-消化管内の細菌等の動態・機能に基づく健康評価技術の創出-/CRDS-FY2007-SP-12
エグゼクティブサマリー

ヒトの疾病は、遺伝子の変異、遺伝子発現の変化、代謝の変動など生体内で起こった現象の結果としてこれまで捉えられてきたが、それらに加えて、腸内に生息する常在菌や食事など外部環境の影響を考慮する必要があることも認知されてきている。

実際、炎症性腸疾患、アレルギー、大腸がん、肥満などにおいては、腸内細菌の状態が病態に深く関連していることが指摘されている。例えば、肥満者と健常者では腸内細菌の種類に違いがあり、この違いは肥満の結果としてもたらされたのではなく、細菌叢の違いが肥満をもたらす原因となることが科学的に明らかにされている。

これまで、細菌叢の動態やその機能、生体との相互作用を解析することは技術的に困難であり、その全体像はほとんどブラックボックスの状態であった。しかし近年、ゲノム解析技術の急激な進歩などにより、ようやく解析の対象になりつつあること、さらに、今後も関連技術の発展が期待され、ヒトの健康や疾病を環境要因との相互作用という観点から捉え、総合的な解析が可能になる時代が到来しようとしていることから、本プロポーザルにおいては、ヒト消化管の微小生態系(生体ミクロコスモス)を構成する細菌群(細菌叢)や代謝物の動態・機能を把握し、それを指標としてヒトの健康状態を評価する必要性を示す。

具体的な生体ミクロコスモスによる健康評価の実現に向けての研究課題としては、以下のような課題が不可欠である。

(1)消化管細菌叢・代謝物の動態把握
(2)細菌と消化管の相互作用の理解
(3)機能評価モデル(無菌動物、人工腸管モデル等)の構築

ヒト消化管の微小生態系(生体ミクロコスモス)解析による健康評価の追求は、個別の研究を並列的に実行するだけでは十分ではなく、それぞれの研究グループが情報を共有するなど相互連携して研究を推進する必要がある。そのため、研究開発の推進方法に関しては、共通基盤となるコアグループ(ゲノム解析・代謝物解析・機能評価モデル構築・リソース)の周辺に個別の研究グループが存在するような体制が望ましい。
本提案の推進により、生体ミクロコスモスにおける環境と生体とのせめぎあいの全体像を正確に把握することが可能になり、疾病が発症する前にその兆候を検知するという健康評価の新しいパラダイムを創出することが期待される。
また、これをベースとした日常の健康管理システムを構築することにより、世界に先駆けて超高齢社会を迎える国として、医療費を削減し、予防医療を促進するという社会的要請に応えることが同時に期待できるほか、民間企業が参画できる共通基盤となるプラットフォームを整備することにより、民間企業とアカデミアとの連携を促進し、企業における機能性食品の開発に寄与すると考えられる。

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