2007年12月
(戦略プロポーザル)ヒト人工多能性幹(iPS)細胞の作成成功を機に、関連の幹細胞研究を急速に促進するための緊急提言/CRDS-FY2007-SP-07
エグゼクティブサマリー

京都大学再生医科学研究所 山中伸弥教授は、ヒト受精卵を用いずにヒト皮膚から、神経、心筋、軟骨、脂肪細胞など、様々な細胞へ分化しうる多能性幹細胞(iPS 細胞)を得るという画期的な研究成果を生んだ(2007 年11 月20 日Cell 誌発表)。
上記研究成果は、文字通り世界最先端に位置することを示すものであり、同時にES 細胞樹立に伴う倫理的問題の回避や、移植拒絶反応の解決などに問題を残している再生医療の研究開発を大きく前進させるものである。
しかしながら、現在、欧米の研究グループの追い上げは極めて激しいにもかかわらず、我が国の幹細胞研究への投資状況は海外主要国に比して決して多いとはいえず、再生医療の臨床試験の実施数も欧米に大きく遅れをとっているのが現状である。
よって、独立行政法人 科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)は、この度のヒトiPS 細胞の達成を受け、現代医学では治療困難な疾患を根治する再生医療の、一日でも早い実現を希求する世界中の人々の期待に応えるために、幹細胞研究の推進につき、我が国が取り組むべき事項を下記提言する。

平成19年度内に実施すべき事項
1) iPS 細胞研究を急速に発展させるために、山中教授を中心として強力な研究チームを形成・増強し、それらの研究者が効率よく研究できるための研究室の整備・拡充を図れるよう、緊急な支援を行う。
2) 上記研究チームが研究を加速するために必要な追加研究資金を緊急に投入する。
3) 上記研究を支援する関係機関との調整、広報、知的財産対応などを担当する研究マネージメントチームを結成し、上記研究チームが研究に専念できる体制を構築する。

平成20 年度以降、5 年以内に実施すべき事項
1) iPS 細胞研究と関連の研究分野に集中的に研究投資し、研究基盤の充実と拡大を図るとともに、再生医療のみでなく創薬など、広くその応用を探索するための研究体制を構築する。
2) 関連研究の中核拠点として、幹細胞研究所を設立し、日本の研究者のネットワークを構築するとともに、世界の研究の中核拠点に育成する。就中、アジアの研究者を招聘し、アジアの研究のハブとしての役割を担う事も考慮する。
3) 倫理的、社会的、法的問題に関する指針を明確にし、幹細胞研究を促進する環境を整備する。
4) iPS 細胞を始めとする幹細胞研究について一層の国民理解を得る施策を推進する。

なお、JST/CRDS は平成19年10月に山中教授ら多くの研究者の意見を基に、戦略プロポーザル「幹細胞ホメオスタシス」を提案したが、当時の予測より急速に展開された研究成果を受けて、ここに緊急に提言するものである。

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