2007年12月
(戦略プロポーザル)情報社会のディペンダビリティ - 情報技術の目指すべき目標理念-/CRDS-FY2007-SP-06
エグゼクティブサマリー

これまでの情報技術は、ムーアの法則に象徴されるように、ひたすら高速化、大容量化、高集積化、高機能化、低電力化という「性能向上」を研究開発の目標として追求してきた。その結果、情報システムは社会の中に深くかつ複雑に浸透し、人と組織のあらゆる活動がネットワーク化された情報システムに依拠する社会、すなわち「情報社会」が出現した。情報社会では、情報システムと社会システムの間に明確な境界線を引くことはできず、システムの開発・実装において情報技術と社会技術とが一体となって機能する。
こうした状況で今後の成熟した情報社会を展望すると、我が国の科学技術政策として、今、情報技術の研究開発が目指すべき方向は、従来のような「性能向上」の追求ではなく、「ディペンダビリティ」の追求である。「ディペンダビリティ」は情報社会における安全信頼保障の要となる技術概念であり、将来を見据えた情報社会のグランドデザインに当たって最高の価値として科学技術が目指すべき普遍的な目標理念である。
情報社会では、ひとたびシステム障害、重要インフラ事故、サイバーテロ、情報漏洩など、社会の期待や合意に反する事象が起きると、財産逸失、人命損傷、社会・経済機能マヒなどの深刻な事態を招く。場合によっては国家安全保障への重大な脅威になる。目指すべき社会は、人や組織が社会インフラ、情報環境から提供されるサービスの品質(信頼性、安全性) に揺るぎない確信を持ち、その良質なサービスに依拠して安寧な生活、十全な活動を展開できるディペンダブルな情報社会である
しかるに今日、我々は、ブラックボックス化、システムの複雑化・巨大化、VLSI 微細化、情報量の爆発的増加、サービス利用の多様化、システム要素の経年劣化、ネットワークにおける責任所在の不明確化など、情報社会のディペンダビリティを阻害する原因を生む様々なリスク要因に直面している。これらの要因は、情報社会の進化・発展に伴い、今後一層増加する。

このようなリスク要因の存在を前提として、情報社会のディペンダビリティを実現し、社会の安全信頼保障を恒久的に確立するためには、情報社会を構成する4つの階層、すなわち、
1) 基礎となるネットワーク化「情報システム」
2) 情報システムを活用して構築される社会の「重要インフラ」
3) 重要インフラを活用して提供される「サービス・情報」
4) サービス・情報を享受する人と組織が形成する「情報社会」
のすべてにおいて、ディペンダビリティの実現とその評価が必要である。
このため、この4つの階層のそれぞれにおいて、
i. ディペンダビリティを恒久的に保証するアーキテクチャ
ii. ライフサイクル・リスクを想定した設計・保全技術
iii. ディペンダビリティの定量的評価技術
の総合的な基盤研究開発を戦略的かつ永続的に推進することを提案する。
また、この研究開発を長期的な視点で戦略的かつ集中的に推進するため、情報社会の安全信頼保障に関する基盤的課題の研究開発拠点を設置することを提案する。

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