多様な界面近傍における水分子の動的挙動と機能制御
―低炭素社会のウォーターセキュリティを支える―

エグゼクティブサマリー

本報告書は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)が2025年12月7日に開催した科学技術未来戦略ワークショップ「多様な界面近傍における水分子の動的挙動と機能制御 -低炭素社会のウォーターセキュリティを支える-」の内容をまとめたものである。

近年、水を取り巻く社会的問題は、気候変動、人口増加、経済活動の拡大を背景に多様化・深刻化している。エネルギー制約下での飲料水と衛生の確保や、有機フッ素化合物(PFAS)等の新興汚染物質への対応に加え、低炭素社会への移行において重要な水素製造、生成AIの普及を支えるデータセンターの冷却、半導体の精密洗浄など、新たな水需要も生じている。多様な分野において水の確保と利用技術の高度化が求められており、これら技術の性能向上とエネルギー負荷の低減を同時に実現することは、世界の水問題の解決を見据える上で重要な課題である。

このような状況において、水の科学的理解は、水処理、エネルギー変換、材料設計といった幅広い技術の革新を支えるものであり、ウォーターセキュリティの実現と低炭素社会への移行に向けた新たな科学的基盤の構築が期待される。とりわけ、水と他の物質の界面は多様な技術や材料の性能や効率を左右する中核的領域である。近年、界面近傍の水が従来のバルク水とは異なる特性や機能を示し、界面近傍における水分子の集団構造や動的挙動が、選択透過性や流動性などの発現する機能に深く関与していることが明らかになりつつある。こうした界面近傍の水の理解は、水の確保と利用に関する多様な技術や材料の設計、制御の実現へとつながり得る。これにより、我が国の研究基盤の強化や、水の関与する技術や材料の高度化と革新に寄与すると期待される。

このような現状認識を踏まえ、CRDSは今後取り組むべき研究開発課題について、次の2点を仮説として示した。

  • (1)界面近傍における水分子の振る舞いを、分子レベルの挙動から機能発現に至るまでスケール接続しながら捉える。これにより、人為的な調整係数に依存せず、物理・化学的原理に基づいて水が示す構造・動的挙動・機能の関係を一貫して説明・予測可能な理論体系を構築する。
  • (2)(1)の学理に基づく指針設計のもとで、水の緻密な制御を可能とする基盤技術や、水を活用した機能材料の創出、高度化を推進する。

本ワークショップでは、有識者による情報提供と総合討論を通じて、これらの仮説を検証し、研究開発課題および効果的な推進方法の具体化に向けて議論した。

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