変容する水の機能と界面近傍のダイナミクス ―水の確保と利用の技術革新―
エグゼクティブサマリー
水に関わる問題は世界的に深刻化しており、その対応には水の確保と利用に関わる既存技術の改善に留まらず、既存技術を置き換え得る革新的な技術の創出と性能の飛躍が求められる。本提案は、界面の影響を受け変容する水の構造・動的挙動を共通の設計対象として捉え、界面状態や外部から印加する場に応答して発現する水の機能を科学的に理解し、水の確保と利用技術の新たな設計指針を獲得することで、その飛躍の実現を目指すものである。
水の確保と利用に関わる多様な技術の性能を左右する機能発現の起点として、界面の影響を受け変容する水の構造・動的挙動を捉え、界面から連なる水のダイナミクスの理解に立脚して技術の性能向上と革新を図る。本提案ではとりわけ、水と他の物質や異なる相が接する界面近傍において、界面状態や水質、場の状態などの影響を受けて水の構造や動的挙動が変化し、その変化が水素結合ネットワークを介して界面直上にとどまらず数層先へと広がる特性を重視する。
気候変動による水供給の不安定化に加え、データセンター、先端半導体、水素製造、医療・バイオ分野の拡大により、水の用途は多様化し、水質や供給安定性、利用技術への要求も高まっている。このため、供給拡大に加えて水消費量の削減を進めつつ、濡れ、輸送、分離、付着、冷却といった水が発現する機能を高度化することが重要となる。
一方、水処理膜のファウリング、水電解における気泡付着、半導体洗浄における洗浄不良など、多くの技術課題は界面で顕在化しており、これらには界面近傍での水の振る舞いが関与している。したがって、界面近傍の水の振る舞いとそこから発現する機能の関係を明らかにすることは、各技術のボトルネックの解消や、性能向上へとつながる。
しかし、界面から数層先に広がる中間領域や、分子スケールと連続体スケールの間に位置するメゾスケールにおける水の挙動は十分に理解されていない。このため、界面から数層先へ広がる水の構造や動的挙動の変化がどのように機能を発現し、装置・プロセス性能に影響するのかを、分子スケールから上位スケールへ接続して統合的に記述する枠組みは十分に整備されていない。そのため、技術開発や運用では依然として経験則への依存が残っている。これらの課題を根本から解決するには、界面から連なる水のダイナミクスを科学的に理解し、その知見に基づいて機能を制御することが不可欠である。
以上を踏まえ、次の2つの研究開発課題の一体的な実施を提案する(図)。
- 【研究開発課題1】界面の影響を受け変容する水分子の理解に基づくマルチスケール統合理論体系の構築
- 【研究開発課題2】界面から連なる水のダイナミクスを起点とする機能制御技術の開発と高機能材料創出への展開

図 変容する水の機能による水の確保と利用の技術革新
研究開発課題の推進に当たっては、分野横断のコミュニティ形成と継続的な議論の場の確保が重要となる。あわせて、産業界とも連携し、社会・産業課題を起点に研究ターゲットと評価軸を具体化することが必要である。そのうえで、ターゲットごとのチーム型研究を基本としつつ、分野間やターゲット間で知見、データ、人材を循環させるネットワーク型研究開発プロジェクトを推進することを提案する。ここでは、計測、理論/モデリング、シミュレーション、データサイエンスの専門家がスケール接続モデルの構築と検証を継続的に進める。さらに、これらの専門家が、複数ターゲットを横断して知見を繋ぐ役割を担えるよう、柔軟なチーム編成が可能な体制を構築することが重要である。
本提案の実施により、各分野で個別、経験的に対処されてきた界面において生じる技術課題を根本から解決し、水利用技術の性能の飛躍的向上と革新を実現することが期待できる。
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