ジェンダード・イノベーション

エグゼクティブサマリー

科学技術振興機構(JST)研究開発戦略センター(CRDS)と日本医療研究開発機構(AMED)は、「ジェンダード・イノベーション」を推進する政策枠組みの戦略提言に向けて、科学技術未来戦略ワークショップを共催した。本報告書は、全2回にわたるワークショップの内容をとりまとめたものである。

ジェンダード・イノベーション(セックスとジェンダーを考慮した研究開発・イノベーション)とは「生物学的性(Sex)と社会的・文化的性(Gender)に基づいた分析を行う研究、およびその結果を取り込むことによって創出されるイノベーション」である。これは、研究の質の向上、経済的インパクト、社会的・倫理的配慮の意義において、よりよい科学的知識の生産やイノベーションの創出を目指す。

セックスやジェンダーは、伝統的には医学を中心として生殖に関わることのみで考慮される傾向にあった。しかしながら、科学とジェンダーに関する多くの研究によって、実際には幅広い分野でセックスとジェンダーが関わっていることが明らかとなった。セックスとジェンダーの考慮は今や、自然科学から人文社会科学まで多様な分野へと広がっている。

また、各国の科学技術・イノベーション(Science, Technology and Innovation:STI)政策やハイインパクトジャーナルでは、セックスやジェンダーを考慮することが推奨・義務化されつつあり、日本の研究者も、国際共同研究や国際誌への投稿時にセックスやジェンダーを考慮することが求められている。また、日本の政策議論においても、「第7期科学技術・イノベーション基本計画」(令和8年3月閣議決定予定)、「第3期健康・医療戦略」(令和7年2月18日閣議決定)に基づく「第3期医療分野研究開発推進計画」、「第6次男女共同参画基本計画」(令和7年度内閣議決定予定)など、国の中長期計画において「ジェンダード・イノベーション」が論点として言及されている。

こうした状況に鑑み、日本でジェンダード・イノベーションを促進する政策枠組みを検討するべく、多様な分野の専門家や政策立案者との対話を通じ、現状や課題の把握、将来の可能性などについて議論を行ったものである。

本ワークショップは全2回で構成した。第1回は、多様な分野における取り組みの実情と課題を共有することを目的として、性差医学、生体工学、実験動物学・薬理学、脳神経科学、心理学・認知科学、都市・建築デザイン、AI・ヒューマンインターフェイス、ジェンダーと科学技術、の各分野・テーマの有識者に、セックスとジェンダーの考慮の現状や促進のために必要な方策について話題提供いただき、議論を行った。第2回は、第1回の内容を基礎として、日本における具体的な推進方策について議論を実施した。内閣府(健康・医療戦略推進事務局、および科学技術・イノベーション推進事務局)による日本の関連政策の話題提供、ならびにJST CRDSとAMEDからの提案を行った上で、JSTやAMEDのプログラムディレクターなど有識者からコメントをいただいた。さらに、第1回WSの参加者も交えて総合討論を実施した。

2回のワークショップを通じ、日本においてもセックスやジェンダーの考慮が科学技術の発展のために重要であること、そのための政策的支援の必要性や課題の所在が明らかとなった。本ワークショップの結果も踏まえてとりまとめた戦略プロポーザルと併せて参照いただきたい。

※本報告書の参考文献としてインターネット上の情報が掲載されている場合、当該情報はURLに併記された日付または本報告書の発行年月の1ヶ月前に入手しているものです。